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※昔懐かしの宅配パロで御座います!
簡単な設定としては、銀(しろがね)急便の宅配員たちが引っ越してきた美少女に一目惚れ!な感じのギャグテイストグダグダストーリーです。←
簡単な人物紹介はこちら






ヴー、と短く震えた携帯を開く。
チカチカと光るライトは青色で、それはメールの受信を示していた。

妙は短くため息をついてメール画面を表示する。
受信ボックスに新着メールが一件。
フォルダ分けされたそのボックスの名前は"そうご"と平仮名で名付けられていた。

妙はまたひとつため息をついて、携帯の決定ボタンを押す。


From 沖田総悟
Title ごめん!
―――――――――――――

今から家出る
まじでごめん!
着いたらまた連絡するから


「だから来週にしようって言ったのに…」

形のよい柳眉を寄せて、妙はパタンと携帯を閉じた。
噴水のへりに腰掛けて携帯電話を鞄の中にしまう。

公園の大時計の鐘が鳴り始めた。

駅前の公園、噴水前に11時。

それが今日の待ち合わせの時間だった。
新しく出来たショッピングモールに行ってみようと、いつもより少し遠出をして、電車で30分ほど揺られてやってきた。

久しぶりの幼馴染みとの外出。
こっちに戻ってきてから初めてのお出掛けらしいお出掛けだったのに、と妙は頬を膨らませる。

(やっぱり起こしにいけば良かったな)

気分を変えて現地で待ち合わせにしようと言った自分を少し恨めしく思った。

(今から出たってことはあと40分くらいかな)

メールをもらう前に、もしかしてとかけた電話。きっとその着信音で起きたのだろう。"もしもし"という声は機嫌悪そうに掠れていた。

総悟?と呼び掛けた時のガタンドタンという物音と"今から行きまさァ!!ごめん妙!!"という幼馴染みのどく焦った声を思い出して、妙は苦笑する。

「まあ、仕方ないわね。後でダッツ奢らせてやるんだから」

妙はそう小さく呟いて、顔を上げる。
そしてぶつかった視線に、妙は少々驚いて身を引いた。

「ごめん、びっくりした?」
「君かわいいね!ひとり?こんなところで何してるの?」

ニヤニヤと笑いながら話しかけてくる男が二人。
もちろん、知り合いでもなんでもない。
ああ面倒くさい、と妙は心のなかで悪態をつく。
笑顔を張り付けて、ひとりじゃありません。人を待ってるんです、と短く言った。

「え?でも誰も来てないじゃん。もしかして遅刻?ありえねー」
「そんな奴ほっといて俺らと遊ぼうよ。金なら大丈夫。全部俺らが出すからさ」

ぴきり、と青筋が浮かぶ。

「何々だんまり?ちょーかわいいね」
「ツンとしてても美人〜。俺らと遊ぼ!絶対楽しいから!」

面倒になって、しつこい、と拳を振り上げようとしたその時、ぽん、と頭と頭を撫でられた。

「はいは〜い。ナンパご苦労さん」
「…テメェらこいつに何の用だ」

上から降ってきた声に、妙ははっとして顔を上げる。
見知った銀色と黒色に目を見開いた。

「さ、かたさん…、土方さん」

「なっ、なんだよあんたら!」
「俺らが先に狙ってたんだからな!」

吠える二人の男を、ギロリと殊更きつく睨み付けて、坂田と土方はアァン?とドスの効いた声を出す。
それにヒィッと情けない声を出した二人はすんませんでしたァァ!と脱兎のごとく走り去っていった。

「なっさけねーの」
「大丈夫か?」

フン、と忌々しそうにその後ろ姿を睨みつけて、二人は妙に柔らかく笑いかける。
見知った人物に妙はほっとして肩をなで下ろした。

「すみません、ありがとうございました」

素直に礼を言って、作った拳をほどく。

銀(しろがね)急便の宅配員の坂田と土方。
よく荷物を届けてくれる彼らとは顔なじみで、何かと交流があった。

「お二人とも今日はお休みですか?」
「そ。たまたまかぶってな。明日からまた妙ちゃんちに届けもんしてやるよ」
「ふふ」

おどけて見せる坂田に妙は笑みをこぼす。

「制服姿のお二人しか見たことがなかったから、なんだか新鮮です」
「え、何なに、ときめいちゃったりした?」
「はい、素敵です」
「「…え、」」

そう言ってふわりと微笑った妙に、坂田と土方は思わず見とれて息をのんだ。

「…っ、!」
「…いや、」
「土方さん?坂田さん?」

可愛いまじで可愛いうおおお!と心の中で抱きしめたくなる衝動を押さえながら、坂田は努めて普段通りに話しかける。

「た、妙ちゃんは出掛けんの?」
「はい。待ち合わせしてたんですけど、遅刻するって連絡があって」

苦笑する妙に土方が眉をひそめた。

「遅刻?」
「はい。寝坊したみたいで」

昨日部活で練習試合があって、遅くまで残ってたみたいだから、と妙が続ける。

「だから違う日にしようって言ったんですけど、大丈夫だからって」

少しふくれながらそう言う妙の表情は、それでも少し嬉しそうで。
自分の中に湧き上がった少しの悔しさに土方と坂田はそっと苦笑した。

「もしかして、待ち合わせの相手ってアイツ?あの爽やかフェイスの」
「ええと、総悟のことですか?そうですよ」

やっぱりかと二人はため息をつく。あの生意気な少年にはいろいろと言いたいことがたくさんあった。

妙はふと時計を見やる。時刻は11時12分。
まだかかるなあ、とそっとため息をついた。

「…どれくらい遅れてくるんだ?」
「多分あと30分もすれば来ると思います。だから大丈夫ですよ。すみません、お引き留めしてしまって」

せっかくのお休みなのに、と続ける妙に坂田と土方は気にすんなと笑う。
ちょっと待ってろ、と土方がその場を離れた。

「30分もここに一人だと暇だろ?そーいちくんにも文句言いてェし、俺らもここにいるわ」

妙の隣に腰掛けて、ぐっと伸びをする。

「え、そんな。悪いです。私なら大丈夫なので、気にしないでください」
「いーの。俺らがいいって言ってんだから、年上には甘えなサイ、お妙ちゃん」

でも、と言う妙の頭をわしゃわしゃと撫でた。

「俺らが妙ちゃんと話したいんだって。特に目的地があったわけでもねーし」

そう言う坂田の笑顔に、妙はどこかほっとした心地になる。
じゃあお言葉に甘えますね、と遠慮がちに笑った。

「そーそ。それでい、い…」
「?坂田さん?」

不自然に言葉に詰まった坂田を妙は不思議そうに見上げる。
その視線を辿ると、また見知った人がそこにいた。

「高杉さん!」
「…おう」
「なんでお前までここにいんの!お前今日仕事だったじゃねーか!」
「…るせェな。休み代わってくれってヅラに頼まれたんだよ」

面倒くさそうにため息をついて、高杉は隻眼で坂田を睨みつける

「お久しぶりです、高杉さん」
「あァ」

高杉は坂田たち同僚で、妙のバイト先であるカフェの常連客でもあった。
月曜日、彼は指定席に座って静かにコーヒーを飲む。
美しい、という形容詞がこんなにも似合う男の人を妙は知らない。
指定席の隅っこの席に座りながら、外を眺める彼はひどく絵になっていて、そんな高杉を見ているのが妙は好きだった。

またお店にいらしてくださいね、と言おうとした妙を高杉が指でそっと制す。
黙っていろということらしい。
妙は浅く頷いて高杉を見上げる。それでいい、とばかりにかすかに微笑んだ高杉の表情につい見惚れた。

「何見つめ合ってんだよ!お前こっちくんな変態がうつる」
「誰が変態だってこの天パが」
「待たせたな…、って高杉何でテメェがここにいやがんだ」

どこからか戻ってきた土方が妙に紙カップを手渡しながら高杉を睨みつけた。

「え、あの、土方さん、これ…」
「気にすんな。うまいぞ。ここのカフェオレ」
「ちょ、土方くん俺のは?」
「あ?んなもんあるわけねーだろ」
「ヒドッ!普通買って来るよね?これ完全にいじめだよね?」

どうぞ、と自分の分を差し出す妙を見て、土方が坂田の頭をはたく。
こいつのことは気にしなくていい、と妙に向かって微笑んで天パをぐりぐりと絞めた。

「もらっとけ。人の厚意は受け取るもんだぜ?」
「…すみません、ありがとうございます」

高杉にそう促され、妙は土方に頭を下げる。
どういたしまして、と返す土方に微笑みを返して、カフェオレに口をつけ、美味しい、と頬をゆるませた。

「いや〜、まじ癒されるわ。土方くんグッジョブ」
「…るせェ」
「……」

よしよしと言わんばかりに坂田が妙の頭を撫でる。

気安く触ってんじゃねェと高杉と土方が睨みを利かせる中、ザァッ、と腰掛けていた噴水が水を高く噴き上げた。

「…綺麗」

妙は思わず立ち上がり、高く噴き上げて模様を描く水にしばし見入る。

「妙!!」

突然、聞きなれた声がして、身体が後ろに引っ張られた。
険しい顔の幼馴染を見上げて、そうご、と妙が呼ぶ。

「妙に何の用でィ!…ってあれ、何だアンタらですかィ」

チッと舌打ちをして総悟と呼ばれた少年は妙を後ろにかばった。

「そーいちろうくん、だっけ?」
「何だとはご挨拶だな」
「……」
「何でアンタらがここにいるんでィ。仕事はサボりですかィ?」
「もう、やめて総悟。時間を潰すのを付き合ってくれてたのよ。遅刻して私を待たせたのは誰かしら?」

坂田たちを睨みつける総悟の服を軽く引っ張って、妙がにっこりと笑う。
その笑顔に総悟は俺ですすみませんでしたと顔をひきつらせた。

「…悪かったでさァ」
「だから来週にしようって言ったでしょう?無理しなくてもよかったのに」
「…ちゃんと起きたんでィ」
「二度寝したんでしょ」
「……」
「まったく」

はあ、とため息をついた妙に、総悟がごめん、と手を合わせる。

「ダッツの限定フレーバーのダブル!」

で、許してあげる。

そう言って、妙はにっこりと笑う。
今金欠…、と呟いた総悟だったが、妙の笑みに気圧されてわかりやしたとため息混じりでうなずいた。それを満足そうに見やって、妙はご機嫌だ。

「…何アレ超うらやましいんですけど」
「…幼なじみなんだろ」
「……ッチ」

一方で3人は不機嫌そうに眉を寄せる。
そんな男たちに、総悟はにやり、と意地悪く笑んだ。

「妙、そろそろ行きやしょうぜ」
「あ、そうね」
「ってなわけで、すいやせんでしたー。俺らはこれからデートなんで、失礼しやす」

ざまあみろ。と表情が言っていた。
3人の額にぴきりと青筋が浮かぶが、俺は大人、アイツはガキんちょ、と念じながらどうにかこうにかその苛立ちをやり過ごす。

「皆さん付き合って下さってありがとうございました!」

お時間を取らせてしまってすみません、とぺこりとお辞儀をして、妙は差し出された総悟の手を取った。
手繋ぐ必要なくない?という坂田の呟きは噴水の音にかき消された。


〜おまけ〜

「…幼なじみってあんな仲良いっけ?」
「知らねーよ。でも普通あれくらいの年頃になったらちょっと疎遠になったりすんじゃねェのか」
「……」
「つーか何だんまり決め込んでんだよ高杉!お前だって妙ちゃんのこと気に入ってんの知ってんだからな!」
「っ、!黙れ銀時っ」

(可愛いあの子にもう夢中!)
(あんなガキに渡してたまるか!)

***

「なんでィそれ」
「ん、これ?土方さんが買ってくださったの。カフェオレ。飲む?」
「…飲む」
「はい。すごくおいしいわよ」
「…嫌いじゃねェでさァ」
「もう、素直じゃないのね」

(幼なじみから恋人に。さて、ここからが正念場!)
(オッサンどもには絶対渡さない!)




やかな


(勝負はこれから!)


Title: a dim memory


大変長らくお待たせ致しました…!リクエストくださった匿子さまに捧げます!パラレル設定ということで、昔懐かし、宅配パロで書かせていただきました。お妙さん総受けからの沖妙オチ、ご意向に添えているでしょうか…?なんだかわちゃわちゃさせ過ぎた感がありまくりですみません><あと神威の出しどころを逃してしまって結局銀さん土方さん高杉さんだけになってしまいました…。重ねてお詫び申し上げます。蛇足ですが、この沖田さんとお妙さんは沖→妙な関係です。お妙さんは例の如く沖田さんの恋愛感情には気付いてません。でもお妙さんにとって一番身近で仲のいい男の子は沖田さんなので、他の野郎どもに比べれば一歩リードしている感じになります^^(あれ、これ完全に蛇足だった)
もちろん返品も受け付けておりますので、何かありましたらお気軽にご一報くださいませ。
素敵なリクエストありがとうございました!


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