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きっとそれはラブ(威妙)


※目覚ましコールと続いてます


「聞こえたわよ〜。あんたの旦那、やるわね〜」

にやにやと笑みをたたえながら近づいてきたのはおりょうだ。
授業終了とともに騒がしくなった教室。
周りから少し視線を感じるのはきっと気のせいじゃない。

「お妙ちゃんでっかい声で呼ばれとったな〜」
「あのピンク頭のやつでしょ、確か」

妙の席に次々と寄って来る友人たち。
彼女たちの言葉に、冷めたはずの頬がまた熱くなった気がした。

「愛されてるわね〜」
「…そんなんじゃないわ」
「素直になりよ、お妙ちゃん」

力なく否定すると、そう言って花子が肩をつつく。

「もういい加減あんたも素直になったらいいんじゃないの?ゴリラなんかよりよっぱどマシだと思うけど?」
「素直にって…」

だからそんなんじゃないって言ってるのに、と妙は心の中でもごもごと呟く。

「もう1ヵ月くらいたつよなー。あのひとがお妙ちゃんにアタックし出してから」
「あんなに好きだって言ってくれてるんだからもういいんじゃないの?結構人気あるのよ、彼。ほら、顔はいいし」
「ほんとにメンドくさい女ねー。付き合ってみたらいいじゃないのよ。それで無理だったら別れる。でも適当になんか貢がせてからにしなさいよ」
「あんたの意見は参考にならないのよ!」
「阿音ちゃんこわいわー」
「お子ちゃまシスターズにはわかんないわよ」

好き勝手に話を進める友人たちに、妙はそっとため息をついた。

別に嫌いなわけじゃない。
ただ、戸惑っているだけだ。
あんな両手放しで好意を向けられて、それをどう受け止めていいのかわからない。

好きかと聞かれれば、多分好きな部類に入るだろう。
でもそれが恋愛の好きかどうかはいまいちわからない。

「うじうじもやもや頭で考えるから余計にわからなくなんのよ。アンタみたいな恋愛初心者は自分の気持ちに正直でいればそれでいいの!」
「うわー、なんか阿音ちゃんがまともなこと言うてるように聞こえる」
「まあお妙も満更じゃなんでしょ?あとは時間の問題ね」
「…なあに、それ」
「そのままの意味よ」

なによそれ、と言い返しながら、妙は机の上に出しっぱなしだった教科書をしまう。
校庭に目をやると、サッカーゴールが目に入った。

(綺麗なシュートだったわね…)

結構な距離があるのに、彼の声はここまで届いた。
一体、どれくらい大きな声を出したんだろう。
それに、あんなに離れたところから、よく自分がいると気付いたものだ。

「妙ー!」

廊下から聞こえた声に、妙はびくりと肩を揺らす。
振り向くと、見慣れたピンク頭の彼が手を振っていた。

「神威くん」
「見てた?さっきの!」

教室に入ってきて、ぎゅっと妙の手を握る。

「呼んでたの、気付いた?」
「ああいうのはやめてちょうだいっていったでしょう!だいたい…―――」


「早くくっつかんかなあ、あのふたり」
「学校一のヤンチャ少年と学校のアイドルってどこの少女漫画かっつーのよ」
「お妙も素直じゃないんだから」

(少女漫画の王道設定。最終回まであと何話?)

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