性転換♂⇔♀(威妙)
※姐御が兄貴です!苦手な方はご注意ください><
「妙くーん!」
みつけたー!という声とともに視界に入った桃色の髪。
ああ、またか、とため息をつく暇もなく、ものすごい勢いで懐に何かが飛び込んできた。
「っと、」
「ふふ、妙くん!久しぶりの妙くん!」
ぎゅうぎゅうとすごい力で抱きしめられて、よろよろと数歩うしろにさがる。
「また貴女は…。こういうことはやめて下さいと以前言ったはずですが?」
「知らなーい」
頭ひとつ分ほど下にある彼女の頭を軽くはたいて、べりっとひきはがした。
「貴女も女性なんですから、もう少し慎みを持ったらどうなんです。こういうことは好いた方にするものですよ」
「私妙くんが好きヨ!だから何の問題もないの!」
わざとらしく盛大にため息をついてみせるが、彼女がそんなことを気にするはずもなく、今度は背中に抱きついてくる。
半分ずるずると引きずりながら、台所へ向かう。
慣れとは恐ろしいもので、彼女の激しいスキンシップにもすっかり慣れてしまった。
お茶を淹れて居間へ戻る。
テーブルの上に湯飲みをふたつ並べ、この間買った茶菓子を皿にあけた。
「神威さん」
「なーにー?」
「お茶、淹れましたけど。いらないんですか?」
「いる!」
「じゃあまず離れて下さい」
「えーそれもヤダー」
「お行儀が悪いですよ」
「私は天人だもん。オギョーギなんて知らなーい」
「まったく…。困ったお嬢さんですね貴女は」
「妙くんがその大福あーんってしてくれたら離れてあげてもいいヨ」
「はっ…?」
「ね、あーんってして?」
「……」
半ば呆れ顔で冷ややかな視線を送ってみるが、彼女は変わらず妙くん妙くん、と甘えるような声を出す。
「妙く、もがっ!」
言っても聞かないことは学習済みなので、仕方なく大福を神威さんの口に突っ込んだ。
「ほら、これでいいでしょう。早く離れて下さい。お茶が冷めてしまいますよ」
「むー!はんはひはうー」
「こら、食べながら喋らない」
大福を丸ごとひとつ口に入れ、肩に顎を載せてむぐむぐと口を動かす彼女は、なんだか小動物のようだった。
口の周りについた大福の白い粉を拭ってやると、ありがとう、と嬉しそうに笑った。
はた迷惑で、振り回されっぱなしだけど、こういうところはかわいいと少しだけ思ったりもする、ある晴れた午後。
(きゃあああああああ!!神威さん!兄上に何してるんですかァァァァァ!)
(何っておやつ食べてるんだけどー)
(離れて下さいーっ!!!)
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