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たくさんあった、伝えたいこと(沖妙)※


※死ネタ







視界が歪む。
呼吸が苦しい。
刀が重い。

今俺はどこにいる?
近藤さんは?土方は?山崎は?

斬りかかってきた敵をなんとか躱して、力任せに刀を振って首を屠った。
ああ、力の加減ができない。
効率の悪い戦い方は好きじゃないのに。

身体の軸がぶれる。
血が足りない、酸素が、―――。

「総悟!!!」

土方の怒鳴り声。
遠のきかけた意識が、瞬間、引き戻される。

「総悟、総悟!!しっかりしろ!立て!!オイ、総悟!聞こえてんのか!!!」

ああ、うるせェなァ…。
視界に影が差す。
敵だ、と反射的に判断して体を引いた。

どしん、と重い刀身がさっきまで立っていた場所に刺さる。
地面が揺れた。頭も揺れる。
重い、苦しい。

「総悟!!!」

迫る刀。腕が上がらない。
ああ、やばい、これは―――。

『ご武運を』

ふっと頭に声が響く。

『お帰りを、いつまでもお待ちしております』

絶対に戻ってくると、約束した。

約束したのに―――。

「総悟ォ!!!」

受け止めきれずに、刀が弾き飛ばされる。
肩口に、刀身が食い込んだ。

血飛沫が舞う。
総悟、とまた土方の声。

うるせェなァ、ちゃんと聞こえてまさァ…。

どさり、と地面に倒れこむ。

総悟、と今度は近藤さんの声がする。

あぁ、頼んまさァ、近藤さん、そんな声出さねェでくだせェよ…。

暗くなる視界。
ずぶずぶと沈んでいく意識。

『総悟さん』

「…ね、さ」

浮かんだ笑顔に応えるように手を伸ばして、俺は意識を手放した。





(ごめん、)
     (あいしてるよ)


title:灰の嘆き


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