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恋人の時間(山妙)


「あ、あの…、山崎さん」
「ん?なに、お妙さん」

遠慮がちに話しかけた妙に、山崎は笑顔で返事をする。

やっとの思いでもぎとった久しぶりの非番。志村邸の縁側で恋人と過ごすこの時間ほど癒されるものはない。
山崎は上機嫌だった。
あわよくばお妙さんとイチャイチャしたいな、なんてことを思いながらも、山崎は妙に最上級の笑顔を向ける。

ああ、可愛い。ほんとに可愛い。
鼻の下がのびそうになるのをこらえて、山崎はお妙さん、と呼びかける。
あの、と妙がまた遠慮がちに言った。

「うん、なに?ちゃんと聞くよ。どうしたの」
「あの、ね、えぇと…。その…」

妙はやや恥ずかしそうに、もじもじとしながら山崎を見つめる。

やめて、その顔やめて!可愛すぎるから!
山崎は思い切り緩みそうになる顔を懸命に引き締めながら、うん、とまた繰り返した。

「お妙さん」
「は、はい…」
「頑張って」
「っ!」

瞬間、顔を真っ赤にして、妙は眉を吊り上げる。
恥ずかしくてたまらないらしい。
ほんとに可愛いなあ、と山崎はにやついた顔で、立ち上がりかけた妙の手をつかんだ。

「お妙さん」
「……」
「ごめんね」
「…意地悪な人」

不満げに唇をとがらせて、妙は山崎から目をそらす。
掴んだ手に指を絡ませながら、山崎はごめんね、ともう一度言った。

「ほら、おいで」

両手を広げて、山崎はにっこりと妙を見上げる。
また赤くなった妙をにこにこと見つめながら、可愛い人だなあと本日5回目の可愛いを繰り返した。
握っていた手をそのまま引くと、きゃあ、と短い悲鳴が上がる。

「もう!山崎さん!」
「あはは、やっと来た」
「…ばか」

俺はお妙さん馬鹿だからね、と山崎は嬉しそうに言って、腕の中の妙に頬を寄せる。

「甘えたなお妙さんなんてレアだな」
「…うるさいですよ」
「今日はたくさんイチャイチャしようね」

耳元でそっと囁いた言葉に、妙が僅かに首肯したのを感じて、山崎は破顔した。



title: a dim memory

―――

半端ないコレジャナイ感…。
甘えたいお妙さんと、それに気付いててちょっと意地悪する山崎さん。
甘い話が書きたくて、お妙さんが素直に甘えさせてください、って言えるなら誰かな、と考えたら山崎になりました。私が山妙好きなだけなんですけどね!


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