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愛はすべてを凌駕する(銀妙♂九)


※お妙さん男体化注意




「た、妙ちゃん!?」

ち、近いよ。
弱弱しくそう言って、九兵衛はそろそろと妙から目線をそらす。
妙が九ちゃん、と呼ぶと頬が真っ赤に染まった。
妙はそれをどこか満足そうに見やって、目を細める。

「男になったら、九ちゃんよりもずっと背が高くなったね」
「…そ、そうだね」
「なんだか変な気分だ」

いつもより低い妙の声。
九兵衛は視線を彷徨わせて、ちらりと妙を見上げた。
目が合って、妙はふわりと優しい微笑を浮かべる。
ぶわ、と自分の顔が熱くなったのを九兵衛は信じられない気持ちで感じていた。

だって、目の前にいる志村妙は、正真正銘の男性なのだ。
男は嫌いだ。自分には、妙だけいればそれでいい。
でも、その妙が男になってしまった場合は一体どうすればいいんだろうか。

「ねえ九ちゃん、」
「な、なに?」
「手、握ってみてもいい?」
「…え」

駄目だよ、とは言えなかった。だって相手は妙なのだ。
男でも女でも、目の前にいるのは大好きな妙。
ただ、今は男性の妙が自分に触れたらどうなるか。

ぐるぐるする思考回路に九兵衛は、押し黙る。
妙は困ったように笑って、嫌だったら投げ飛ばしたらいいから、と小さく耳元で告げた。

驚いて顔を上げた九兵衛に、いつもとおんなじ笑顔を向けて、妙はそっと九兵衛の手を握る。

九兵衛は一瞬身を固くしたが、手はつながれたままだ。
妙ちゃん、と九兵衛が嬉しさをにじませた声で言った。

「大丈夫、みたいだね」
「妙ちゃんだからだよ、きっと」
「私もうれしい」
「やっぱり僕には妙ちゃんしかいないんだ!」

妙ちゃん!と今度は九兵衛ががっしりと手を握り返した。

「男でも女でも関係ない!僕は妙ちゃんが妙ちゃんであればそれでいいんだ!結婚し、」
「待て待て待て待てェェェ!!!」
「あら、銀さんいたんですか」
「いたんですかじゃねェよ!いたよ!銀さんずっといたよ!お前らがいちゃいちゃしてる隣でずっと茶飲んでたよ!」

たまらず叫んだ銀時を九兵衛がじっとりとした目で睨み付ける。

「なんだ、邪魔をするな銀時!今僕たちは大事な話をしているんだ」
「いやいやいや!お前がそう言うだろうことは予想してたけども!男になったっつっても一時的なもんだろうが!結婚なんかダメです!銀さん認めないからね!」
「なぜお前に認めてもらう必要がある。妙ちゃんは僕が幸せにしてみせる!」
「なんでってお前当たり前だろうがァァァ!!お妙は現在進行形で俺の彼女なんですゥ!」
「僕の妙ちゃんへの愛に性別なんて関係ない!銀時、お前は同性になった妙ちゃんでも今まで通りに愛せるのか!?」

うっ、と詰まった銀時に九兵衛はにやりとした笑みを浮かべた。
銀時はのんびりとお茶をすすっている妙を見やる。

何度見ても正真正銘の男だった。
今朝起きてみたらこうなっていたと万事屋に連絡がきて飛んできてみれば、すでに九兵衛がいて冒頭のやりとりが繰り広げられていたのである。

何ですか、と銀時と視線を合わせた妙の顔をじっと見つめた。

「イケメンすぎて腹立つわチクショォォォォォ!!!なんだよその顔!まじ腹立つんですけど!?なに、なんでそんなキラキラしてんの?どっから出してんのそれ!?」
「うふふ、ごめんなさいね。銀さんよりイケメンで。元がいいものだから当然ですけど」
「君はどっちだって素敵だよ、妙ちゃん」
「まあ、ありがとう九ちゃん」
「つーかいつまで手ェつないでんだ!俺にも片方寄越せ!」

空いていた妙の片手を乱暴にとって、九兵衛に見せつけるように握りこむ。
九兵衛も負けじと妙に寄りかかった。

「お前男無理なくせになんでそんなことできんだよ!」
「妙ちゃんは特別だからだ!」

「ふふ、モテモテで困っちゃうわ」

言い合いを続ける銀時と九兵衛を余所に、妙はいい天気ね、と楽しそうに笑った。


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