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最期に映ったのはきみの、(威妙)※


※死ネタ




「…むいさん」

泣いてる。妙が泣いてる。
あぁ、ごめんね。泣かせたいわけじゃないのに。

「神威さん」

目を開けようとするけど、思うようにいかない。
たえ、たえ。
ほら、泣かないで。

「嫌です、どうして」

そんな声、初めて聞いたな。
かなしい。いたい。つらい。
涙が出そうだ。

「…た、え」

上がり切らない手を、妙の手の平が包み込む。
やっとの思いで出した声は掠れていた。

「神威さんっ」
「だいじょ、ぶ。な、かないで」

俺は今笑えてるのかな。
ひゅっ、と妙の喉が鳴った。
妙の温かい手がたまらなく心地いい。

神威さん。震える声でそう呼ばれて、ゆるゆると目を開ける。
視界いっぱいにうつった妙は笑っていた。

「…きれい」

ねぇ、妙。
俺は今笑えてるのかな。
妙の涙が頬に当たったけど、ごめんね、もうそれを拭ってあげられない。

落ちてきた瞼の隙間に、銀色がうつる。
悔しいけど、俺の負けなんだね。
妙のこと。神楽のこと。
どうか、どうか。

「すきよ」

聞こえた言葉に、俺は口角を上げる。
俺もすきだよ、とはもう言えなかった。




(ごめんね、ありがとう)
(君はいつでも、わらっていて)



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