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手土産に君の好物(土→妙←沖)


「おい土方ァ」
「…総悟。口のきき方には気をつけろ」
「姐さんち、寄ってきやしょう」
「…何でだ」
「癒やされたいんでさァ。こんな瞳孔開きっぱなしのマヨラーと一緒にいたら俺まで脳みそがマヨネーズになっちまう」
「テメェは今さっき戻ってきたばっかりだろうがァァァ!!」
「とにかく行きやしょうぜ。もしかしたらまた近藤さんがいるかもしれやせんし」
「…チッ」


「姐さーん」
「はーい。あら、こんにちは。ゴリラなら庭にいますよ」

沖田と土方が妙の指差した方向を向いてみれば、白目をむいて倒れている近藤の姿。

沖田は肩をすくめ、土方は盛大なため息をもらした。

「…世話かけたな」
「うふふ、ほんとに」
「姐さん、これ貢ぎ物でさァ」

白いコンビニ袋を手渡すと、後ろに修羅を背負っていた妙の目が途端に輝いた。
中身はもちろん、妙の大好物である高級アイス。

「ありがとうございます。少し上がって行かれませんか?せっかく持って来て下さったんですし、一緒に食べましょう」
「いや、」
「お邪魔しまさァ」
「おい、総悟」
「いいじゃありませんか。土方さんもどうぞ。甘いのがお好きじゃないなら、お茶お出しします」

そこまで言われては、断るのも失礼な気がして土方も家に上がった。
沖田は勝手知ったる他人の家と言う風にそのまま縁側へと向かっていく。

居間に通されると、妙がお茶を持ってきた。

「はい、どうぞ」
「あァ。すまん」
「いいえ。見廻りご苦労さまでした」
「…おう」

照れたように茶をすする土方を沖田は面白くなさそうに眺め、その雰囲気を遮るように妙に声をかける。

「姐さん」
「はい、何ですか」
「食べやしょうぜ」
「そうですね。あ、ごめんなさい。スプーン取ってきます」
「ありがとうでさァ」

妙が台所へ消えたのを見送ると、沖田は低い声でつぶやいた。

「…死ね土方」
「…お前が死ね」
「姐さんは渡しやせんぜ」
「…何の話だ」
「チッ、今さらとぼけたって遅いでさァ」
「…近藤さんはどうすんだ」
「近藤さんには悪いですが、遠慮はしやせんぜ。姐さんには、俺の隣で笑ってて欲しいんでさァ」

ふたりの視線がぶつかる。
沖田の目はいつもと違って真剣だった。

「お待たせしました」

ありがとうごぜェやす、と沖田はいつもの調子に戻って、妙に笑いかける。
こ土方の視線の鋭さが増した。

「久しぶりなんです。とっても嬉しいわ」

そう言って、妙は笑みをこぼす。
いつも大人びた妙の、等身大の笑顔に触れた気がして、土方も沖田も赤くなりかけた頬を隠すように視線をそらした。

「おいしい。お二人とも、ありがとうございます」

幸せそうにアイスを口に運ぶ妙を見て、土方が控えめに笑った。
沖田も優しげに目を細める。

そしてかち合った黒と蘇芳色。
互いにスッと目をすがめて、心の中でそっと決意する。

(…間違っても、)

(こいつにだけは)

ふたりのひそかな攻防は、今日も続く。


(渡してたまるか俺のオアシス!)


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