SS | ナノ

逃がすものか(高+妙)


※なんちゃって必殺仕事人パロです。パロとか言いながら全然別物になりました。
ただのお妙さんが殺し屋設定のパラレルです。
人が死ぬ描写があるのでご注意ください。殺伐としてます。







ぐ、と手に力を込めて引くと、かくんと首が落ちた。
羽交い締めにしていた男が事切れたことを目で確かに確認して、そっとその場を後にする。

最初は震えていた手。
せりあがってきていた嘔吐感。
直視なんてできなかった。

でも、もう何も感じない。きっともう、慣れてしまったんだろう。

人の気配を探りながら、屋敷の外に出る。
薄い月明かりだけが夜道を照らしていた。

今日は下弦の月の日。
雲に阻まれてその姿はうっすらとしか見えない。

ふと、視界に映った人影。
屋敷の影に身をひそめたが、見知った人物であることに気づいて肩の力を抜いた。

「妙」

見留めたのは、紫煙をくゆらせて悠然と薄い笑みを浮かべる隻眼の男。
妙と呼ばれた女は一瞥して顔を覆っていた頭巾を取った。

夜の闇を閉じ込めたような艶やかな髪が、顔を出した月の明かりを吸い込むように輝いた。

「…あなたが出てくるなんて珍しいのね」
「愛しい女の顔を見に来たとでも言や納得するかァ?」
「斬り殺すわよ」

思い切り男を睨み付けて、妙はそのまま背を向ける。
ついてくるなとばかりに手で払った。

「つれねェなァ」
「…もう行くわ。仕事は済ませた。文句はないでしょう」
「そんなに明日の逢引きが楽しみか?」

くつりと喉を鳴らして笑う男を、妙は今度こそ殺気を込めて睨み付ける。

「彼をどうする気なの」

妙からの鋭い殺気など気にも留めず、むしろ心地よい風に男は笑った。

「ククッ、取って食いやしねェさ。そういう約束、だからなァ?」

そう言って、男は煙管をトントンとたたく。
細められた男の目を忌々しげに睨み付けながら、妙は踵を返した。

「彼に何かあったら殺してやるから」

すれ違いざまに告げられた言葉に、くつりくつりと男は笑う。

妙は蘇芳色の彼の瞳を心に浮かべて、ただ一心に走った。



(逃れる術など始めから、)


title(title):灰の嘆き

prev / next
[ back to top ]

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -