優しい昼下がりの午後(銀妙夫婦)
「銀さん」
柔らかな声音が鼓膜を震わせて、微かに目を開ける。
優しい顔をして俺の髪を撫でる女は、つい先日妻になった女だ。
「銀さん」
また俺の名を呼んで、妙は眦を下げる。
俺の嫁さんまじ可愛いと心の中で呟きながら、緩慢な動作で頭を行き来する手を掴んだ。
なあに、と言いたげに、妙は俺を見る。
いつの間にこんなに"女"になっちまんたんだろうと思いながら、いたずらに指を絡めた。
「眠いんですか?」
妙の膝の上は極上に気持ちがいい。
浅く頷くと、妙は仕様のないひと、と言いながら絡めた指を撫でた。
「お寝坊さんな旦那さまね」
その言葉に僅かに照れが含まれていることに気付いて、たまらなくむずがゆくなる。にやけそうになる口元を引き締めて目を閉じた。
「おやすみなさい、いい子の銀さん」
からかうような口調。
目下のところ、小姑と姑のような新八と神楽がライバルではあるけれど、こいつのこんな優しくて甘い声を知っているのは、今までもこれからも、きっと俺だけ。
幸せだなァとごくごく自然に頭の端で考える。
そうですね、と甘い声と優しい手の感触に、俺は再び眠りの世界へと意識を手放した。
prev / next