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君を想って、花占い(威妙)


「会いたい、会いたくない、会いたい、会いたくない…」

ぴよぴよとあほ毛を揺らしながら、ぷちりぷちりと何かをちぎる上司の姿を見つけて、阿伏兎はため息をつく。

「こんなところにいやがったのか…」

はぁ、と大きくもうひとつ。
艦の中でも一番大きな窓がある広間。
眼前には青い地球(ほし)。
その真ん前にぺたりと座り込む神威に、阿伏兎はなんとなく状況を悟る。

神威の周りに散らばっているものを見回して、首をかしげる。
そこかしこに散らばる、白い、何か細いものと緑色の細い棒。
何度か目を凝らして、それが花びらだということに気付いた。
ということは、このぷちりぷちりという音は花びらをちぎる音らしい。

随分と可愛らしいマネをしているなと半ば気味悪さすら感じながら、阿伏兎は揺れる桃色に声をかけた。

「なぁにやってんだよこのスットコドッコイ!もうすぐ地球につくってのに何をふらふらしてんだ」
「あ、阿伏兎ー」

神威はさも今あなたに気付きましたとばかりにそう言って、ぴょこりとアホ毛を揺らす。気付いていたくせに、と思いながらも、口には出さない。

「なにやってんだァ。花なんかちぎって」
「花占いだよ。阿伏兎知らないの?」

花占い。なんとも可愛らしい、目の前の男にはおよそ似つかわしくない言葉が飛び出てきて、阿伏兎は頬をひきつらせる。
触らぬ神に祟りなしとばかりに、へェ、と生返事を返した。
神威がそんなことを気にするはずもなく、花びらがなくなって茎だけになった花だったものをぽーいと阿伏兎に向かって放る。
それをひょいとよけながら、阿伏兎は深くため息をついた。
あぁ、頭が痛い、と額に手を当てる。

「…”会いたくない”って」
「…何がだよ」

ひしひしと感じる嫌な予感に阿伏兎は頭を抱えたくなった。

あぁ、たぶん、これは。

「…妙が」

小さくそう言って、神威はすねたようにころりと横になる。
的中した予感に阿伏兎はついに踵を返した。

「俺はこんなに会いたいのになあ…」

ああああああ気持ち悪いったらありゃしねェ!!と心の中で盛大に叫んで、阿伏兎はとある少女を頭の中に思い浮かべる。
地球まであと1時間だと言い捨てるように告げて、何やら一人で傷心中の上司をそのままに部屋を後にした。

あれをなんとかしてくれ嬢ちゃん、と呟きながら。


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