世界への侵入を赦したひと(高妙)※
※死ネタ
体温が低くなっていくのがわかる。
痛みなど、とうに忘れた。
ぼんやりと霞む視界の中で、妙だけがはっきりと映っていた。
綺麗だ、なんて柄にもないことを思って、出来れば笑ってくれ、なんて。
泣くなよ。頼むから。
お前にそんな顔をさせるために、置いてきたんじゃないんだぜ?
何をのこのここんなところまで出てきてんだよ。
っとに、しょうがねェ女。
でもそんなお前が、俺は、
「―――」
ブラックアウトする視界。
握られた手を握り返してやることもできないままに。
(ごめん、なんて)
(俺に言わせたのはあの人とお前だけ)
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