相合傘、濡れてる方がなんとやら


※学パロ鴨妙+モブ子
鴨妙ですが、2人は全く話しません。
モブ子ちゃんの一人称で話が進みます。
大丈夫だよ!!という方のみレッツスクロール\(^^)/









母親に頼まれて寄った、スーパーの帰り道。
片手に牛乳とミニドーナツが入った袋をぶら下げて、ぱらぱらと降り続ける雨にため息をついた。

新調したばかりの傘をさすのが嬉しいだなんて小学生みたいな理由でついつい安請け合いしたのはいいが、足元が悪くて嫌になる。

(今度長靴も買おうかなあ。可愛いやつ最近は多いし)

さすがに学校には履いていけないけれど、憂鬱な雨の日が少しでも楽しくなるなら、レイングッズを充実させるのも悪くない。

バイトでも始めようかなあと考えながら、ふと視線を上げた。

(あれ?)

道路を挟んだ向かい側の道に、見慣れた制服が見えた。同じ学校の生徒だ。
遠目ではあるが、どこか見たことのある顔だった。

あのヘーゼルナッツ色の髪。それから、理知的な雰囲気を感じさせる眼鏡。
ネクタイは自分たちの学年と同じ赤色で、そんな特徴を持つ生徒と言えば、一人しか思い当たらない。

(…伊東くんだ)

クラスには“イトウ”が二人いて、それぞれ“イケメンな方”と“残念な方”の呼ばれている。
今見ているのは間違いなく“イケメンな方”の伊東くんだ。

同じクラスの伊東鴨太郎くん。
ちなみに席は斜め前。
剣道部の副主将で、インターハイでも活躍したらしい。
運動も勉強も出来て、かといってそれを特別鼻にかけているわけでもない。進んで誰かに声をかけたりするような気さくなタイプではないのであまり目立つタイプではないけれど、クラスの男子たちとは少し違う大人びた雰囲気があって、ひそかに女子に人気がある。

彼はこっちの方面だっただろうかと首を傾げながら、気付かれない程度にこっそりと目で追いかける。
伊東がさしているのは、可愛らしい花柄の傘で、男子の持ち物にしては少々可愛すぎる気がした。
借り物かなあと思って見ていると、伊東がどうやら一人ではないことに気付いた。

「えっ!」

思わず声が出て、慌てて口を押える。
この距離で聞こえるはずがないとわかっていても、伊東がこちらを振り向かないかとハラハラしてしまう。
振り向く素振りがないのにほっとして胸をなでおろした。

(えっ!?相合傘!?伊東くんが!?誰と!?)

すっかり釘付けになって、立ち止まる。
追いかけて呼び止めたい気持ちをなんとか抑え込んだ。

伊東が曲がり角を曲がる。
隣の子の顔を見ようと頑張ってみたが、残念ながらまったく見えなかった。
揺れるポニーテールがかわいい。背は高めのようで、スラッとしたシルエットの子だった。

(待って待って!伊東くん!誰!?その隣の子誰!?)

待ってと叫びそうになるのをじたばたしながら我慢して、ふとあることに気付く。

傘を持つ伊東の左肩。
隣の女の子が雨に濡れないように、傘を傾けて。

(うわあ、うわあ…!)

視力が良くてよかったと、今ほど思ったことはない。
傘から出た伊東の左肩はずぶ濡れで、ぶわわっと顔に熱が集まった。

冷たいわけではないけれど、伊東はどことなくクールなイメージがあって、どちらかというと近寄りがたい雰囲気を持っている人だ。
彼女に優しくする伊東というのは、失礼ながら全くイメージ出来なくて、そのギャップに余計にドギマギした。

(なにこれドキドキする!)

半ば興奮状態で、その姿が見えなくなるまでがっつりと見送った。

「うわあ…うわあ…何あれどうしよう!」

押さえきれずに、声が漏れる。
明日絶対に報告しなくては、とにやけ始める顔を引き締めて、雨足の強くなった帰り道を急いだ。




(素敵な恋がしたくなる、そんな雨の日)



 

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