「迎えに行くから待っていて」
沖妙年の差幼馴染設定
沖田→中3
妙→高3
互いに近隣の中学、高校に通っています。
HRも終わり、一気にざわつく廊下。
つい先日テスト期間が終わったばかりということもあって、教室内に居残って話し込んでいる生徒も多いようだった。
部活に向かう生徒をぼんやりと眺めながら、沖田は大きく欠伸をした。
バイバイ沖田くん。眠いの?なんてすれ違い様に問いかけられて、ああうんバイバイと適当に返事をしながら自身の教室を目指す。
日直の日誌も提出し、あとは帰るだけだ。
ガラリとドアを開けると、やはりいつもより人が多い気がした。
しかし、ふと感じる違和感。
教室内の密度が何故だか窓側に偏っているのだ。
多数のクラスメイトが窓に張り付いている。
教室で話し込んでいるというより、窓から何かを覗き見ているらしい。
なんのこっちゃと白けた目でそれを眺めながら、沖田は鞄を手に取った。
「やっべ!超美人!」
「あれって二高の制服だよね!?なんでうちに来てるの?」
「まさか彼氏がここにいるとか!?」
「えっ、年下!?うっそー!?」
聞こえてきた声に、沖田はふと嫌な予感がして肩にかけた鞄から携帯を探す。
(まさか、そんなわけ…)
自分でも焦っているのがわかった。
窓に張り付くクラスメイトを蹴散らして、今すぐにでも外を確かめたい。でもそれも恰好悪い気がして、自身のプライドが許さなかった。
落ち着け、落ち着けと言い聞かせながら、画面をスワイプする。
飛び込んできた『受信メール 志村妙』の文字に、沖田は慌てて教室を飛び出した。
沖田くんバイバイ、というクラスメイトの返事もそこそこに、ただ校門を目指す。
開いたメール画面には、こうあった。
From: 志村妙
Title: 今日
――――――――――――――――――
ホームルームが早く終わったので、
今日は私がそっちに行きます。
校門で待ってるね( *´艸`)
終わったらまたメールください(`・ω・´)
『終わったらまたメールください(`・ω・´)』じゃねーよ!!!!と心の中で叫びながら、沖田は携帯を握りしめる。
途中でぶつかりそうになった男子生徒への謝罪もそこそこに、沖田は盛大に舌打ちした。
(あれほどこっちには来んなって言ってたのに、何で来ちまうんでさァ!!)
急いで下靴に履き替えて、転びそうになりながら、沖田はやっとの思いで校庭に出る。
ちらりと振り返ると、あちらこちらの窓から外を覗いている生徒が多数いた。
見てんじゃねーよと怒鳴りつけたくなる気持ちを抑え、沖田は校門まで走る。
そして見つけた人物を沖田は叫ぶように呼んだ。
「っ妙!!!」
沖田の声に少女が振り返る。
ポニーテールが揺れて、花のような香りがした。
「総悟」
お疲れ様、と笑う妙は可愛いくて、沖田はぐっと言葉につまる。
さっき叫んでしまったせいで、注目を浴びていることも気付いていた。
自然と声が小さくなる。
「…何でこっち来たんでィ」
「メール見てない?ホームルームが早く終わったから、たまにはいいかなあと思って」
「良くないでさァ…」
「え?」
自分が今どれほど注目を浴びているのか気付いてないのか。
鈍感な幼馴染兼恋人にため息が漏れる。
出来ることなら、ずっと秘密にしていたかったのに。
「…もしかして、迷惑だった?」
「…違いまさァ」
迷惑なのではない。ただの子供っぽい嫉妬心が恥ずかしいだけだ。
「…行こう」
困惑している妙の手を引いて、沖田は歩き出す。
校舎の方から悲鳴のような歓声が聞こえた。
ああ、なんてかっこ悪いんだ!
「総悟、ごめんね?」
「…何で謝るんでィ」
「総悟が怒るの、わかってて来たから、ごめんなさい」
「……」
妙は頑固だが、自分には殊更甘い。
それを沖田は知っていた。ケンカしたとき、いつも謝ってくれるのは年上である妙の方だ。
年の差はたったみっつ。それが少し情けなくて、悔しくもあった。
「…総悟がモテるって新ちゃんが言ってたから」
「え?」
「中学で、総悟すごくモテてるって新ちゃんが言ってたの。私は、学年が被らないから、そういうの全然知らなくて…。少し、やきもちやいたの」
だから、ごめんなさい。
いつも通る公園のそば。
沖田はたまらず座り込んだ。
大丈夫かと心配そうに問いかけてくる妙に、大丈夫だからと返事をして、沖田は熱くなる顔を覆った。
(こんのヤロ…っ!一体誰の入れ知恵でィ!不意打ちで爆弾落とすのはマジで勘弁でさァ…っ!)
こんな顔、彼女にだけは見せたくなかったのに。
自分よりも互いをよく知る幼馴染だったとしても、恋人になった今は、彼女の前では“弟分”じゃなくて“男”でありたかった。
可愛い彼女を見せたくない独占欲。
自分以外の誰かが彼女に向ける熱のこもった視線に我慢が出来なくて。
だから、だから、いつも自分が行くと言っていたのに。
顔の熱はなかなか引いてくれそうにない。
自分はこんなにも彼女が好きだと、いつも思い知らされてばっかりだ。
沖田はちらりと妙を見る。
握ったままだった手を少し引き寄せて、妙の耳元で囁いた。
「迎えに行くから待っていて」***
「…総悟、耳まで真っ赤よ」
「…るせェ」
「ふふ、可愛い」
「可愛い言うな!妙だって顔赤いでさァ」
「…だって恥ずかしかったもの」
(普段はそんな素直じゃないくせに!)2014, July
甘酸っぱい沖妙が書きたいなあと思っていたら学パロになりました。同い年の二人をあえての年の差で。そしてお妙さんが年上で!沖妙なのにお妙さんの影薄くてごめんなさい;
年上のお姉さんなお妙さんにやられっぱなしの沖田くんが書けて満足です。
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