薬指にくちづけを
※情後です。直接的な表現はありませんが、ぬるーく大人向けかと思います。そういった表現がお嫌いな方はブラウザバック推奨です。
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白み始めた空に、沖田は目を覚ました。
腕の中には一糸纏わぬ姿の妙。
昨夜の妙の姿がふっと脳裏に蘇って、湧いてくる邪念を慌てて追い払う。
寝起きだというのにあらぬところが元気になりかけて、なんとかこらえた。
「ん…」
妙が腕の中で身じろぎする。
体温を求めるように沖田の胸にすりよった。
「妙?」
「…そ、ごさん?」
「起こしちまったかィ?」
ふるふると妙は首を振って、うっすらと目を開けた。
「そーごさん」
「ん?」
少しかすれた低めの声が、沖田を呼ぶ。
妙の口元に耳を寄せるように、顔を近づけた。
「総悟さん」
妙はとろんとした瞳で、沖田の首に腕を回す。沖田もその体をそっと抱きしめ返した。
「体、辛くねェかィ?」
耳元でそう問うと、妙はくすぐったそうに身をよじらせて、こくりと頷いた。
妙の頭を優しく撫でて、首筋に唇を寄せる。
目についたのは、昨夜自分がいたるところにつけた所有印。久々に会ったこともあって、余裕なんてものはなかった。いつもは妙の負担にならないようにと細心の注意を払うのだが、妙の体温と甘い啼き声に酔ってなけなしの理性はあっけなく崩壊。自分の強すぎる加虐心の赴くまま、ひたすらに妙を求めた。昨夜は随分無理をさせたに違いない。
今更、そんな自分が恥ずかしくなって
「…やりすぎちまった。すまねェ」
「ふふ、大丈夫です」
妙の体を労るようにそっと背を撫でる。
妙は柔らかく微笑んで、再び沖田の胸の中に身を寄せた。
「眠いんで?」
「ん…」
「まだ寝てても大丈夫だぜィ」
よしよしと頭を撫でてやると、妙はすぐに眠りに落ちていった。
妙の寝顔をそっと盗み見て、額にちゅ、と口付けた。
妙が眠っていることを確認して、沖田は枕元に置いてあった自身の服の懐を探る。取り出したのは小さなビロードの箱。中におさまっていたピンクゴールドのリングを妙の右手の薬指にそっとはめる。中央にあしらわれたルビーがきらりと輝いた。
「…1年記念、でさァ」
指輪のはまった薬指に優しくキスをして、沖田は目を細めた。
今日で妙と付き合ってちょうど1年。
記念日なんてガラじゃないとわかっていたけれど、何か形に残るものを贈りたかった。普段からあまりわがままを言わない妙に、感謝と愛情を込めて。独占欲と束縛という理由があったのは秘密だ。
左手じゃなく右手なのは、予約のようなつもりだった。
妙以外の女と結婚する気なんてさらさらないし、別れるつもりだってない。それでも、プロポーズはまだ先だと決めていた。
もっと自分が大人になって、妙を守れるだけの力を持つ男になってから、きっと妙の告げようと。左手の薬指に嵌める指輪はその時に。
青臭いと言われても、それが自分の妙に対するけじめと誠意だった。
「妙」
小さくそう呼んで、愛してると耳元で囁くように告げる。
「あとちょっとだけ、待ってろィ」
すやすやと寝息をたてる妙を優しく見つめて、沖田も目を閉じた。
「おやすみ、妙」
(君の左手薬指、予約済み)
(キャンセル、返品不可!)Title: 確かに恋だった
旧サイト 41000hitキリリク
End
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