年を越してみた
※『自由気ままに』夢主(名前固定)×部長s


「あーん?何でお前が居やがる。」

「お、待っとったわ跡部君。」

立海の応接室、もとい裏生徒会室で暮らし、学校を守っている空。大晦日くらい学校を空けてもいいじゃないかと空を迎えに来た俺様は大阪に居る筈の白石に出迎えられた。

「遅かったね、跡部。」

「…お前もか幸村。」

「俺、空の保護者だから。」

「・・・」

『あ、景ちゃんだ。ワオ、豪華ゲスト勢揃いですねー。』

「良かったなあ、空ちゃん。」

『うぃ。』

空の頭を繊細な手付きで撫でる白石。おい、いつの間にそんなに仲良くなったんだ。

「空、この状況どうなってやがる。」

『わ?』

「どうして白石と幸村が此処に居るんだ。」

『んーそれは話せば長くなるんすけど、まあ取り敢えず今年は楽しく年が越せるみたいっす。』

「は?」

『ほら、景ちゃんも座って座って。』

空に促されるままコタツに入る。テレビには年末特有の番組が流れていて、備え付けのキッチンからはダシの香りが漂う。…本当に何でも揃ってるなこの部屋。

「お待たせ、できたよ。」

『わお、流石せーちゃん先輩。美味しそうっす。』

「ふふ、ありがと。」

「ほな、熱いうちに頂こか。」

『そっすね。んでは、いただきますー。』

猫舌の空は苦戦しながらもどんどん食べていく。あ、2杯目盛りに行った。

「口に合ったかな?跡部。」

「あ、ああ、悪くない。」

「それは良かった。」

「跡部君、年越しそばとか食べたことなさそうやもんなあ。」

「まあ…いつも海外だからな。」

「あはは、やっぱりね。」

「ホンマ期待裏切らんな。」

うるせえ笑うな。…だがまさか、1年の最後をコイツらと過ごすなんて思ってもいなかった。

「あ、そうだ。俺達が此処に居る理由、教えてあげるよ。」

「あーん?」

「俺ら空ちゃんとメールしてるんやけど、"今何処に居るん?"って聞いたら"学校なうっす"って返信来たから立海に飛んで来たんや。」

「裏生徒会室に住んでるのは知ってたけど、まさか此処で年越しするなんて思わなかったよ。跡部に連れて行かれる前に来れて良かった。」

「せやな。空ちゃん確保や。」

…複雑な心境だ。こう、娘を嫁にやる父親のような…

『ニシシ、山盛りっす。』

「ホンマよお食べるなあ。見てて気持ちいいわ。」

「美味しそうに食べるね。作った甲斐があったよ。」

『いやあ、絶品なんすもん。』

「おい、もうすぐ年が明けるぞ。」

『あ、本当だ。危ない危ない。』

空は一度食べるのを止めて姿勢を正し、

『蔵先輩、せーちゃん先輩、景ちゃん、ボクは幸せでしたー。』

時計の針は2本とも頂上に達し、テレビの中では新年の挨拶が飛び交う。

『今年はボクが皆さんを幸せにしますー。』

俺様の幼なじみはなんとも男前だ。


※2013.1.1 お正月企画小説





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