※サイトOPEN1周年記念小説。

  銀魂、高杉成り代わり。銀時落ち。

  2011.04.01 (Fri)




卯月の初め

  うづきのそめ


「いい子だね。」

優しく微笑む松陽先生が大好きだった。

頭を撫でてくれるその手が大好きだった。

『松陽せんせえぇ!』

あの瞬間(とき)、この世界が大嫌いになった。


  * * *

あの日から十年以上が過ぎた。


『こんな世界...』

ザシュ

「がはっ!」

ズバッ

「う..が...」

『こんな世界、ぶっ潰してやる。』

ヒュッと、刀に付いた血を払う。

攘夷戦争が終わった今も私は刀を振るい続けていた。

「おーおー、また派手にやったなー。」

『...銀時。』

「まったく... いつまで刀振り回してんだ? 美人が台なしだろ。」

『五月蝿い。からかってんの?』

「ちょ、待て! んな怒んなって!」

殺気混じりに刀を向けると、銀時は慌てて口を閉じた。

「美人はキレるとこえーよ。」

『...』

「ま、待て待て落ち着け!」

『...何か用?』

「あーそれそれ、忘れてた。銀さんわざわざ誘いに来たんだぞ?」

『誘い?』

「ああ、飲みに行こうぜ。ヅラと辰馬と俺とお前とで。」

そう言うと、緋色の目を細めた。

その死んだ魚のような目を。

『誰が行くか。』

「お前っ、ヅラ達だって楽しみに...」

『お前らと馴れ合うつもりはない。』

「なっ!」

『私は松陽先生を奪ったこの世界が許せない。こんな世界ぶっ潰してやる。』

「...」

『お前らはすっかり牙が折れたな。私は1人でもやっていく。もうてめぇらと馴れ合うつもりはないんだよ。』

そう吐き捨て、銀時に背を向けようとしたその時、

「嘘だな。」

『は?』

「最後のは嘘だな。」

『ハッ、何言ってやがる。嘘なわけないだろ。』

「いいや、嘘だ。」

『嘘じゃない。』

「嘘だ。」

『嘘じゃ、』

「じゃあ何で、んな顔してんだよ。」

『は...?』

「何で、んな苦しそうな顔してんだよ。」

『なっ! そんな顔してるわけ、』

「してる。 スゲー淋しそうで辛そうな顔。鏡見てみろよ。」

『っ...』

「図星だろ? 銀さん舐めんなよ。お前のことはガキの頃から見てんだ。」

何も言い返せなかった、図星だったから。

寺子屋で初めて見た時は何だコイツと思った。

ぼんやりした目、不真面目な態度。おかしなヤツだった。

だけどその目でずっと見ていたのか、私のことを。

『銀時、お前...』

「エイプリルフールだからなー。お前も意外とそういう行事好きなんだな。」

『...は?』

「だーかーら、エイプリルフールだから嘘付いたんだろ?」

『え、いや違っ、』

「そんで銀さんも見抜けたんだぜ? エイプリルフールだからお前が嘘言ってるって。」

...は?

『...じゃあ顔がどうとかガキの頃から見てるとかって...』

「ああ、あれ嘘。 演出感出すために言ったんだけどー...もしかして図星だっ、ぶっ!」

『死ねクソ天パ。』

イラつく天パをぶん殴って、私は船に戻った。



-----------------------------

知ってるか?

エイプリルフールって午前中だけなんだぜ。

銀さんの照れ隠しだってーの。

...お前があまりにも可愛かったから。