夜兎のあたしにとって、このくらいの距離なんて大したこと無いのに。なのに、何で… 何で息があがるの? 何で、こんなに苦しいのよっ…

『…馬鹿。』

「馬鹿じゃない、桂だ。」

『!?』

迂闊だった、呑気に考え事なんて。気配に気付けなかったのはいつぶりかしら…

「こんな夜分遅くに、女子(おなご)が1人で出歩くのは感心出来ない。家まで送ろう。」

『け、結構よ。(銀時に黙って出て来たから、こっそり帰るしか無いのよね…)』

「そう遠慮するな。この桂がちゃんと…「いたぞ!桂だ!!」

怒号と銃声。ちょっと待て状況が把握出来ない。

「ちっ、幕府の犬共めが。すまぬが一緒に逃げてくれ。」

『…は?』

「いくぞ!」

『え、ちょっ、』

不意に腕を引かれたせいで、抵抗する間もなく屋根の上に引き上げられた。長い髪をしているから女性かと思っていたが、その力強さから男を感じ取った。

『ちょっと!あたしを巻き込まないでよ!!』

「これも何かの縁だろう。共に江戸の夜明けまで駆け抜けるぞ!」

『話を聞きなさっ…!』

突然感じた気配。あたしは桂とかいうおにーさんを突き飛ばした。

「なっ!」

『さっさと逃げなよ、おにーさん。』

音からして多分バズーカ。おにーさんを無事に突き飛ばし終え、あたしも弾を避けようとしたが、

『…あ、』

ドオォン

切れた鼻緒、一生恨んでやる。




逃亡劇



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逃亡劇を繰り広げるおにーさんの姿があたしの姿と重なった。そんなことを考えながら、あたしの意識は闇に沈んでいった。




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