シンデレラ





「ちょっと雪!まだ埃が残ってるわよ!!」

『は、はいっ。』

「M.M、それ程強く言わなくても良いだろう。」

「あ、あたしだって雪にこんな事言いたくないわよ!でもそうしないと話が進まないじゃない。」

「確かにそうだが...」

『私は大丈夫だから進めて?』

「雪もこう言ってるし、それに骸ちゃんって怒ると恐いのよ...それじゃあ留守番よろしくね。」

「...行ってくる。」


継母と義理の姉のM.Mとランチアは舞踏会が開かれる城へと向かった。


『お母様もお姉様も羨ましいな。私も行ってみたいけど、こんな格好じゃ...』


雪の格好は街を歩くことすら恥ずかしい、みすぼらしい姿。舞踏会に行きたい気持ちを諦めて掃除の続きに取り掛かろうとしたその時、


「行きたい?」

『え! 貴女は?』

「私は魔法使い。貴女に魔法をかけてあげる。」


藍色の霧に包まれて咄嗟に目をつむった。少しして恐る恐る瞼を上げると目の前には立派な馬車。そして服は美しい空色のドレスになり、靴はガラスのヒールになっていた。


『わぁ..綺麗...』

「雪、可愛い。」

『うっ!』


魔法使いの衣装に身を包んでいるクロームにギュッと抱き締められた。


『クローム..苦しい...』

「あ、ごめん。」

『ハァ、ハァ...(助かった)』

「こんなに可愛い雪を皆に見せるのは勿体ないけど
ちゃんと進めないと骸様が怒るから...」

『?』

「雪、乗って。」

『う、うん。』

「犬、千種、お願い。」


いつの間にか犬が馬の位置に、千種が従者の位置にスタンバイしていた。


「...めんどいけど、行くよ。」

『うん。行ってくるね、クローム。』

「行ってらっしゃい。門限は0時ね。」

「行くびょん!しっかり掴まってろよ、雪。チーターチャンネル!!」


馬車は猛スピードで城へと向かった。


* * *


『凄い、これが舞踏会…』


人混みに流されないように、不慣れながらも城へと足を踏み入れた。その途端、一斉に雪に目が向けられた。


「ゔおぉぉい…」

「ししっ、可愛い〜。」

「おい、ツナ。あいつを見てみろ。」

「え?うわっ、凄い綺麗…」

「可愛いな〜、あのコ♪」


大勢の中で一際美しい雪はまさに注目の的。誰もが目を奪われた。


『(どうしよ...なんか見られてる?やっぱり私には舞踏会なんて不釣り合いなのかな…)』


雪はそれらの視線は好奇的なものだと思い込み、好意的なものとは思いもしなかった。


『帰ろうかな…』

「それは困りますね。」

『きゃ!』

「おやおや、すみません。驚かせてしまいましたね。」

『い、いえ…大丈夫です。』

「クフフ、それなら良いですが。でも帰ってもらっては困ります。」

『どうしてですか…?』

「この舞踏会は僕の結婚相手探しのために催されているのですよ」

『結婚相手探し?』

「はい。」


結婚相手探し...だから女性の数が尋常じゃないのか。目の前のオッドアイの人は女性顔負けなくらい美しいし、物腰もどこか柔らかい。そんな人と結婚出来る可能性があるから女性は皆必死なんだ。

...ん? あれ?


『もしかして…王子様ですか?』

「そうですよ。」

『っすみません!私、知らなくて...』

「クフフ、気にする必要ありません。これから知っていけば良いんですから。」

『え、』

「雪、僕と結婚して下さい。」


え? 結婚?

ザワザワと周りが波立った。


『お、王子様!考え直して下さい!身分だって違うし、私には輝きなんて無いし、貴方に私なんて不釣り合いです…』

「身分なんて関係ありません。それに貴女は可愛らしく、何より綺麗だ。」

『っ...で、でも私、0時になったら魔法が解けてみすぼらしい格好に戻っちゃうんです!』

「心配ありませんよ。僕が代わりに幻術をかけますから。まあ、服なんていくらでも用意できますしね。」

『う...』

「答えを聞かせて下さい、雪。僕と結婚してくれませんか?」


こうして雪の永久就職先が決まったのだった。

おしまい♪



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「皆さんご苦労様でした。」

「おめでとうございます、骸様。」

「これくらい朝飯前だびょん!」

「骸ちゃん、支払いは高めでお願いね。」

『計画的プロポーズ!?』

「ガラスの靴…使わなかった。」

「「「「『あ』」」」」







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