『...』


私は独特の形をした指輪をクルクルと回した。

昨日、綱吉の父親だと名乗る男から渡されたそれは、"ボンゴレリング" と言うらしい。


『守護者ね...』


綱吉がマフィアのボス候補ということには薄々気付いていたが、まさかあのボンゴレとは予想外だった。

そしてその守護者の1人として選ばれた私。

綱吉は母親似かな、なんて考えていると応接室のドアが開いた。


「お前が雲雀零か?」

『...誰?』


突然現れた金髪の男に怪訝な顔をする。


「俺はディーノ。 ツナの兄貴分でリボーンの知人だ。」

『赤ん坊の... じゃあ強いのね。』


赤ん坊の知人ならただ者ではない筈。

私はトンファーを構えた。


『戦いましょうよ。』

「...噂通り、とんだじゃじゃ馬だぜ。」


"いいぜ、来いよ!"

そう言って屋上へ走り出した彼のあとを追い掛けた。


  * * *

「そのリングの話もしたいんだが...」

『必要ないわ。 私は貴方を咬み殺せれば良いの。』

「ったく、しょうがねーな。 じゃあ交換条件だ! 俺が勝ったらリングの話を聞いて貰う。」

『勝ったら、ね。』


ヒュンッ

「!」


確実に側頭部を捉えた筈だったのに、跳ね馬は紙一重で避けた。

やはりただ者じゃない。


「あっぶね!」

『早く武器を構えなさい。』

「んな綺麗な顔に傷付けられるかよっ!」

『...ふざけてるの?』

「ち、違う! リボーンから "雲雀零はすげえ美人だゾ" って聞いてて、実際本当に綺麗だし...」

『...』

「でも飲んでたのがココアってのは可愛い、 『っ咬み殺す!』 うわ、待てって!!」


...ココア、見られた。

咬み殺すしかないわ。


「わりぃって! 誰にも言わねーから!!」

『...五月蝿いわよ。』

「っ!」


パシィッ


跳ね馬は漸く武器を取った。

その鞭で私のトンファーを次々と止める。


『...やるわね。』

「お前もその歳でその強さなら十分だぜ。」

『何言ってるの? 手加減してるのよ。』

「なっ!」


ガッ


『(直撃を防いだか...)』

「っ...」


休む間もなく左のトンファーを打ち込もうとした。

...だけどそれは叶わなかった。


『!』

「ふう... ギリギリ間に合ったな。」

『この鞭、いつの間に...』

「お前がトンファーを振り上げた瞬間だぜ。」


私の腕は、屋上の梯(はしご)を軸にした鞭に絡め取られていた。


カラーン


鞭の圧迫で握力は働かなくなり、手からトンファーが落ちた。


『...すれば? リングの話。』

「いいのか!?」

『約束は約束よ。』


緩んだ鞭を外して、拾い上げたトンファーを仕舞った。


『で?』

「ん?」

『...リングの話。』

「ああ、そうだったな!」


跳ね馬は咳ばらいをすると話し始めた。


「そのリングはボンゴレリングつって、ボンゴレボスを守護する者が持つんだ。 お前が持ってるそれは雲のボンゴレリング。」

『この刻印は雲?』

「そうだ。 雲の指名は"何者にも囚われず我が道を行く孤高の浮雲"。それが零にぴったりだってツナの親父さんがリングをお前に渡したんだ。」

『孤高の浮雲、ね...』


ふうん、そういうこと。

これではっきりしたわ。


「零... ツナの守護者になってくれるか?」

『群れるのは嫌いよ。』

「なっ!」

『...でも彼の近くにいれば強い者と戦えるわよね。』

「え...?」

『なってあげるわ、雲の守護者。』


予想外の私の答えに跳ね馬は目を丸くしていた。


「い、いいのか...?」

『二言は無いわ。』

「っやったぜ!!!」

『ちょ、ちょっとっ!』


跳ね馬は異常に喜んで私の両手を握り、上下させた。


「こんな簡単になってくれるとは思わなかったぜ。 ありがとな!」

『そんなに喜ぶこと? 跳ね馬のことじゃないのに。』

「ツナは弟分だぜ? 嬉しいに決まってるじゃねーか!」

『ふうん...』

「な、なあ。」

『何?』

「今、俺のことなんて呼んだ?」

『? "跳ね馬"。』


そう言ったら、跳ね馬はガクリと大袈裟に肩を下げた。


「"跳ね馬" ってのは二つ名だ。」

『名前じゃない。』

「そ、そうだけどなー... "ディーノ" って呼んでくれよ!」

『別にどっちでも..「よくない!」 ...』


ズイッ、と顔を近付けてきた跳ね馬。

"名前で呼んでくれ!"

彼の目がそう言ってる。

別にどう呼ぼうが変わらないけど、名前で呼ばない限り跳ね馬は引き下がりそうにないわ...


『...ディーノ。』


小さく言った私は目を見張った。

だって、跳ね.. ディーノが満面の笑顔だったから。


「おうっ! よろしくな、零。」


その笑顔は、私には眩し過ぎた。




Abbagliante
   sorriso

  〜眩しい笑顔〜


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私らしくないけど、その笑顔を見れるなら名前で呼ぶのもいいかな、なんて思った。

でも絶対に言ってやらない。

"貴方の笑顔に心奪われた"、なんて。





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