平行世界(パラレルワールド)。その存在を完全否定していたわけじゃないけれど、まさか自分がお世話になるなんて思いもしなかった。 『…落ち着け、僕。』 一人称は元から「僕」だったから問題無い。そこ、イタい奴とか言うな。敬語は…まあ、常に低姿勢で行けばいいか。空を思わせるミルキーブルーの髪を軽く整え、チャイムに手を伸ばした。 ピンポーン 重厚な扉の前に佇みながら返事を待つ。妙に静かだな。 『留守でしょうか…?』 それなら好都合。僕はまだ彼に会うべきじゃない。第一、帝光中に入学したばかりで部活も始まったばかりだ。いくら何でも邂逅には早過ぎる。 『原作を滅茶苦茶にするわけには「誰だ?」 うわあぁぁあ!?な、なんてこった…ガチャリと出てきたのは我らが主将、赤司征十郎。不意打ちだろ明らかに。バクバク騒ぐ心臓を叩きのめして、平静を装いながら口を開いた。 『急にお邪魔してすみません。顧問の先生から赤司君に届け物を頼まれたので。』 「顧問?もしかしてバスケ部か?」 『はい。黒子零です。』 「部員は全員把握していたつもりなんだが…」 『僕、影が薄いんです。』 やっぱりどこの世界でも赤司様はマジで赤司様だ。まだ1ヵ月も経ってないのに100人以上いる部員を網羅だと?チートめ。まあ、負けず劣らず「僕」も特殊だけど。 『これが預かった封筒です。』 「わざわざすまないな。」 『いえ、じゃあ僕はこれで。』 よっしゃ!ミッションコンプリート!長居は危険だ。さっさとお暇(いとま)するとしよう。 …しかし、そう簡単に天帝の目が逃してくれるわけもなく、 「黒子零といったな。」 『…はい。』 「俺の物になれ。」 『丁重にお断りさせて頂きます。』 ヤベ、この台詞使うの早過ぎた。 --------------------------- 「俺の言うことは?」 『ぜったーい…なんて言うわけねえだろ!』 「え?」 『あ。』 |