『あら?』


庭を見ると、銀時がしゃがんでゴソゴソとしていた。


『銀時。』

「せ、先生!」

『どうかしましたか?』

「な、な、何もっ!」


声をかけると、慌てた様子で走り去ってしまった。


『...?』


どうしたのだろうかと不思議に思いながら門の方に回ると、今度は小太郎がキョロキョロとしていた。


『どうかしましたか、小太郎。』

「わっ!」


驚いた小太郎は "何でもないです!" と言いながら何処かへ行ってしまった。


『小太郎まで...』


次は剣道場の方へ足を運ぶと、晋助を見つけた。


『晋す、』

「!」


声をかけようとしたところ、私を見た晋助は走って行ってしまった。


『...何かしたのでしょうか?』


障子を見ても破られた様子は無く、庭木も傷一つ無い。


『悪戯をして咎められるのを恐れているわけでもないようですね...』


考えても思い当たることは浮かばない。

ずっと此処にいるのもなんだと思い、縁側に向かうことにした。


  * * *

『綺麗ですね...』


縁側に腰をかけて桜を眺める。

早過ぎず遅過ぎず、程よい7分咲き。


『桜は日本人の心。いつか誰もが笑顔で桜を見れる日がくれば良いのですが...』


そう呟き、手元の本に目を落とそうとしたその時、バタバタバタと3つの足音が。


『どうしました?』


銀時、小太郎、晋助は今度は逃げる様子は無く、その小さな両手を私の前に差し出した。


「「「零先生、誕生日おめでとう!」」」

『!』


地面に落ちた桜の花びらは雨風や人に踏まれることで汚れ、傷付いてしまう。

だけど3人の掌の上にあったのは傷一つない綺麗な桜の花だった。


「こ、小太郎も晋助もかよ!」

「零先生は桜が好きだから...」

「そういう銀時こそ!」


どうやら3人は別々で行動していたのに同じものを選んでしまったらしい。


『もしかしてずっとこれを探していたのですか?』


聞くと、3つの頭がコクリと縦に動いた。


『私を驚かそうと、秘密で?』


再びコクリ。

少しずつ違えど、3人とも照れたような表情をしていた。


『銀時、ありがとうございます。』

「へへっ、おー。」


藍色の目を細める銀時の、その柔らかな白銀の髪を撫でた。


『小太郎、とても嬉しいですよ。』

「はい!」


黒い目を輝かせる小太郎の、その艶やかな黒髪を撫でた。


『晋助、大切にしますね。』

「...うんっ!!」


赤い目をへにゃりと下げる晋助の、その軽やかな紫の髪を撫でた。


『こんなに嬉しい誕生日は初めてです。ふふっ、貴方達の先生をしている私は幸せ者ですね。』

「「「零先生ー!」」」


飛び付いてきた3人をギュッと抱き締めた。

風に乗った桜吹雪が私達を優しく包んだ。

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「零先生、これ...」

『貴方達から貰った桜の花ですよ。栞にしてみました。』

「使ってくれているのですね!」

『はい。宝物ですから。』

「へへっ//」




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