「久しぶりだな、ジズ。」 1年振りに見たその姿は数年前と変わらず、美しいままだった。 『わざわざ時間作ってまで来ること無いんだぜ、エルヴィン。』 「友人に会うための時間も惜しいと思う人間になれと私に言うのか?」 『…狡い返しだな。』 ジズは苦笑し、『降参だ』と両手を挙げた。 「ハンジからこれを預かってきた。お前に会えないことを酷く嘆いていたぞ。」 『傷薬だな。サンキュ、巨人の話は1年後な、ってハンジに伝えといてくれ。』 「ああ。…ところでジズ。」 『ん?』 「調査兵団に入『駄目だ。』…ジズ。」 『俺の身は上層部の物だ。言うならば頭のてっぺんから爪の先まで。』 「だが!人類のために壁外で命を削る者の名を隠す権利まではっ…」 『いいんだ。』 「歴史に刻まれることも無いんだぞ!?」 『構わないさ。エルヴィン達が覚えててくれたらそれでいい。』 「…っ頑固者だな。」 『それ、俺にとったら褒め言葉。』 1度だけ共闘したリヴァイとジズを見た時、黒と銀の狼のようだと思った。もし三重の壁が破られても、その双璧は最後まで聳(そび)え立ち、牙を剥き続けるだろう。しかし、上層部に首輪を付けられた銀は「兵器」として外に放り出され、黒だけが人類最強の「兵士」として内で讃えられた。 人類は知らない、壁の外で戦う功労者の名を。上層部は知らない、ジズとリヴァイが肩を並べた時の強さを。 「…1年後、また会いに来ても良いだろうか。」 『じゃあ意地でも生還しないとだな。友人に会うために。』 |