ティリリッ


アラームを彷彿させる音に意識が浮上する。まばたきを繰り返すことでぼやける視界を鮮明にし、ゆっくりと起き上がる。音源であるサイドテーブルに目を向けると、もう見ることはないと思っていた白いボスウォッチが置いてあった。


『…用済み、ってことかな。』


壊すことも出来ない、餌にもならない。バミューダはこの時計には価値など無いと判断したのだろう。

桜は酸素マスクを取り、腕に繋がる管も順々に外していく。


『…』


左腕をぐるりと回す。痛みも違和感も無い。無事に回復したようだ。治療に尽力してくれた晴の炎の保持者達に心の中で感謝を述べながら着物に袖を通す。戦闘に特化したそれは動きを制限することはない。


『呪われた虹の連鎖を断ち切る。』


ボスウォッチを左腕に付けて、窓から飛び出した。


 * * *


気紛れに立ち寄った村で見つけた虹の炎を秘めた子供は、既に虫の息だった。だが、「欲しい」と思った。

弱り切った身体が耐えられるか分からなかったが、一か八か虹の力を与えた。奇跡的に病は完治したが、どうやら記憶は消えてしまったようだ。

さて、この子供をどうしよう。人柱は強くなければならない。子供の育て方など知らない私は時空を越えた。期待通り、強い力を持つ家を見付けた。その家に子供を預け、私は影から見守ることにした。その子供が強くなるまで、ずっと。


「虹の神はキミしか成り得ない。不可避の運命を前に、キミはどう足掻く?」



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