ザワリ、風の音に目を開けると、満開の桜が目に入った。


『これは…夢…?』


傷ひとつ無い自分の身体は不自然だ。きっと此処は現実の世界ではない。

ふと視線を上げると、いつの間に現れたのだろうか、桜の木の下に2人の男女が。


「僕達の幸せはずっと続いていく。」

「ええ。この桜が証明してくれるわ。」


自分と同じ色彩の男性、そして十年後の自分によく似た顔立ちの女性。桜の花びらに包まれながら寄り添う2人に釘付けになる私の耳に、誰かが囁いた。

「お前の命を救ったのは私だ。さあ、戻っておいで。我が娘。」


 * * *


沢田家の周りは黒服の男達で埋め尽くされ、家の中には進んで空間を共有することのない筈の面子が揃っていた。しかし彼らは拳をぶつけ合って戦った信頼できるメンバーで。

静かな闘志を潜ませたツナが口を開いた。


「この虹の代理戦争は桜を再び虹の神にするためのものなんだ。」

「どういうことだあ?」

「ずっと昔、桜は流行病で死にかけたんだ。」

「あの忍の里で、ですね。」

「うん。でも其処にチェッカーフェイスが現れた。あいつは桜の素質を見出していて手を差し伸べたんだ。桜を虹の神…至高の人柱にするために。」


戦いが終わった瞬間、アルコバレーノ達は虹の欠片を抜かれて死に、桜は人柱に向かって再び原点から覚醒を始める。何も生まれない無意味な戦争。残るのは悲しみのみ。


「だからお願いです、一緒に戦って下さい!」



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