ティリリッ 《バトル開始1分前です。》 鈴のような音と機械的な音声が響いた。各所から炎が上がる並盛町を見て、桜は羽織を掴み、急いで駆け付ける。 『遅かった…』 並中に着いた頃には既に制限時間を超えた後で、瓦礫の中に2つの姿を見つけた。 『家光さん。』 「お、桜ちゃんか。」 『ツナは…』 「気を失ってるだけだ。」 大の字に倒れているツナにそっと触れる。成る程、重い一撃を受けたようだ。 「我が倅もまだまだ青いなあ。」 『でも、着実に殻は剥がれてきてます。』 「そりゃ過大評価じゃないか?」 『どうでしょう。』 「フッ…まあ、まだ父親の背中を小さいと思わせるわけにはいかないがな。」 * * * 「クフフ、他のチームも気付いたことでしょう。我々こそが代理戦争の覇者に相応しいと。」 「君達の幻術がここまで凄いとは。見直したよ、骸君。」 「僕もヴェルデ博士の装置の威力には感服しました。」 「よくお互い心にもないことを言い合えますねー。きっと性根が腐ってるんですねー。」 「「む?」」 「それはそうと骸師匠。今日の幻覚のトレーニング、師匠と同じ髪型でやっていいですか?」 「なっ!」 頭の被り物を林檎からパイナップルに変えたフランを骸はすかさず三叉槍で突き刺す。叱られたフランは腹いせにヴェルデを振り回す。 「おい!この馬鹿ガキを何とかしろ!骸!!」 「静かに。来客です。」 「来客ー?」 下駄の音を伴って現れたのは桜で。フランは一目散に飛び付いた。 『わっ!?』 「桜さんー。会いたかったですー。」 『あれ?フラン、記憶が無いんじゃ…』 「桜さんのことは意地でも覚えてましたー。」 懐かしいですー、と抱きしめられる。小さなフランが被っているのは蛙ではなく林檎で、なんだか新鮮だ。 「フラン、桜から離れなさい。」 「えー、イヤですー。」 「離れろ。」 「うげっ。」 『!』 「おや、気付きましたか。」 『フランってこの頃からこんなに高度な幻術が使えたんだね。』 「教育には苦労しましたが…」 何でも最初はフランをヴァリアーとなすりつけ合ったらしい。どんな問題児かと思ったが、原石には違いない。 「桜。」 『何?ヴェルデ。』 「明日、私達はリボーンとユニのチームを狙うつもりだ。」 『…そう。』 「そんな体で戦おうなど考えないことだな。」 ヴェルデのもっともな言葉に反論する気は無い。何か言いたげな骸から視線を外し、踵を返した。 Back |