並盛町を眼下に臨む小高い丘の上、真新しい日本家屋が佇んでいる。表札も掲げられていないその屋敷に桜は数年前から住んでいた。 『ゴホッ、ゴホ…』 口元から手を離すと赤色がべっとりと付いていた。体中に痛みが走り、呼吸もままならない。 『ゲホッ…』 何故だか覚えのある苦痛に表情を歪ませながらも、血を洗い流すため洗面所へと力の入らぬ足を進めた。 * * * 「懐かしい思い出を楽しんでもらえたかな?アルコバレーノ諸君。君達は今、全員が1つの同じ夢を見ている。」 「何だとコラ!」 「ムッ!」 1つの夢の中にユニを除くアルコバレーノが集められた。彼らの前に鉄の帽子の男が現れると、部屋は殺気で満たされた。 「てめえ!」 「探しましたよ。」 「慌てるな。私は君達と戦いに来たのではない。君達の意志の確認、そして提案をしに来たんだ。」 「意志の確認だと!?」 「提案?」 「まずはとてもシンプルな確認だよ。君達をアルコバレーノに変えたその呪い…虹の呪いを解きたいか?」 思わぬ展開に全員が目を見開いた。鉄の帽子の男、チェッカーフェイスの問いにアルコバレーノ達は肯定を示すが、リボーンだけは「信用できない」と一蹴りする。 しかし、チェッカーフェイスは構うことなく話を進める。最もアルコバレーノに貢献してきた者、つまり最も強いアルコバレーノの呪いを解く、と。 「アルコバレーノ同士が戦えばおしゃぶりが破壊されてしまう可能性がある。そうならないために、あるルールを採用する。」 「ルールだと…?」 「各々が自分の代理を立てて戦うのだ。」 その時、ガタリと物音がした。一斉に振り返ると、小袖姿の桜が立っていた。 「桜!?」 「どうして此処に…」 「私が呼んだのだ。虹の力を失ったようだが、この虹の代理戦争に参加する資格はあるからな。」 「なっ!」 『虹の代理戦争…?』 チェッカーフェイスは唯一晒されている口を弓なりにし、最上級の笑みを作ってみせた。 「期待してるよ、我が娘。」 Back |