「見て参りました。」

「ご苦労。」

「シモンファミリーは周りを夥しい数の敵に包囲されていますが、何とか持ちこたえています。しかし、やられるのは時間の問題かと。」

『っ…スペードさん!はやく助けに!』

「お待ちなさい、桜。その前におまじないをしてあげましょう。」

『おまじない…?』

「はい。必ず生き残れるおまじないです。」


言われるがままにデイモンと目を合わせていた桜は、その瞳が妖しく光ったのを最後に意識を失った。


「何をっ!」

「少し眠ってもらっただけですよ。コザァートの元へ行かれては困りますからね。」

「!?」

「これより速やかにシモンファミリーの下へ行き、ファミリーを全滅させ、シモン=コザァートを八つ裂きにするのです。」

「!」

「死炎印の付いた指令書を持って行けば味方だと信じ、隙も生まれよう。」

「了解しました!」


 * * *


ボンゴレの屋敷に桜を抱えた傷だらけのデイモンが雪崩れ込んできた。


「ぐふっ!」

「デイモン!桜!大丈夫か!?」

「申し訳ありませんっ…予想以上の敵の猛攻に我が精鋭をもってしても全滅は免れず、桜は敵の幻術を受けて…」

「そんな!?」


ジョットは眠る桜の額にかかる髪をかき上げる。閉じられた瞼は上がる気配が無い。


「すまなかった…俺の責任だ。やはり俺が行く!」

「無駄です!!」

「無駄…?」

「我々が駆けつけた頃には時すでに遅く、シモン=コザァートは息絶えておりました…」

「っ…」

「せめて亡骸を連れて戻るつもりだったのですが…」

「…そうか。借りを作ったな、デイモン…」


唇を噛み締めるジョットの背後、人知れずデイモンはほくそ笑んだ。


「(ヌフフ…計画通りシモン=コザァートを消し、桜に染み付いた彼に関する記憶を封じることができました。)」




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