※進撃の巨人、リヴァエレ、死ネタ


処刑台であたためて


その日、人類は巨人に勝った。

ついに全ての巨人を駆逐したのだ。

エレンは巨人の中から引きずり出されながら、考えていた。

目のあった団長が、自分を見て苦しそうな顔をした理由を、知っていた。 まだ、全ての“巨人”を駆逐し終わったわけでは、なかったからだ。


「エレンを処刑・・!?どうしてだ!」

「・・・明日憲兵団のほうへ引き渡され、明後日には処刑 される」

「アイツは人類の勝利に大きく貢献した!それでもあいつ等はエレンを殺すってのか!?」

「私だってエレンを殺したくは無い。しかし・・・しかし」

「それをどうにかすんのがテメェの役目じゃねぇのかよ!?」

「私はできる限りのことをした!・・・だが決定は覆らない・・っ!最後の巨人であるエレンは民衆の前で殺されるらしい・・・そこで、」

「言うな。わかってる。・・・どうせ俺が殺すんだろ」

「・・・・すまない」


エルヴィンはリヴァイの顔を直視できずにいた。 今エルヴィンがリヴァイに告げたことは、すなわち自分の恋人を自分の手で殺せということなのだ。エレンとリヴァイが付き合っていることは知っていた。だからこそ最後までエルヴィンは憲兵団に抗議し続けた。あの子は子供だ。まだ子供なのだと。 これから壁外に出て海を見て、沢山のことをしるべきなのだと何度もそう伝えた。 しかし相手は聞く耳を持たなかった。・・・もてなかったのである。

巨人はあまりにも人類に恐怖を与えすぎた。これ以上、乱されるわけにはいかなかったのだ。

ナイルが苦しそうな顔をしてこの話は終わりだ、と打ち 切ったとき、エルヴィンも理解してしまった。 この男もまた、エレンを殺したくなど、なかったのだと。


「エレンが殺されるって本当ですか。しかも貴方が処刑するって」

「・・ああ、本当だ」

「何故!?貴方はエレンの恋人、でしょう!?」

「・・上の取り決めには従わなきゃなんねぇ」

「っふざけるな!!貴方がエレンを守らなくて、誰がエレンを守れるというの!?私は、私はムリだった・・・!エレンの支えになれるのは、貴方しかいない!」

「・・・悪い、ミカサ」

「・・・・・やめて、ください。そんな顔・・・エレンが悲しむ」


崩れ落ちたミカサを前に、リヴァイは目を閉じた。エレン、お前のことを思っているやつらは沢山いる。

だから諦めんじゃねぇ。だから、だから

だから、一言言ってくれ。

助けてと、そう一言言ってくれれば俺は、俺は

お前を悲しめるものをすべて、消してしまうのに。


「もう、いいんです」

どこまでも世界は残酷だった。

少年から光を奪った世界は、少年から希望を奪った。

リヴァイは鉄格子の前で泣き崩れそうになるのを必死に堪 えていた。エレンはただ、微笑んでいた。


「・・どうして、死を受け入れられる」

「貴方がいたからです」

「・・・俺、が?」

「貴方のおかげで、俺は生きている。貴方のおかげで、俺はここまで生きてこられた。・・・死ぬときも、貴方に殺されて死ねるのならば本望です」

「このバカエレン・・・クソガキが。・・・・・最後の最後くらい、俺に甘えろよ」

「十分甘えさせていただきました。・・・・兵長は俺の全てですから」


エレンの笑みは美しい。 血に濡れても、その白い肌に浮かぶそれすらも、美しい。

リヴァイの唯一だった。 エレンは、リヴァイの最後の宝だったのだ。

そのエレンに手をかける。そのエレンを殺すのは、自分だ。

リヴァイは緩く微笑んだ。ありがとう、と笑ったエレンに、涙は見られなかった。




処刑当日

処刑場になる広場には、多くの民衆が詰め掛けていた。

エレンに浴びせられる罵声とリヴァイ対しあがる歓声。エレンの同期たちは最後まで目をそらさまいとひたとエレンを見据え、ミカサとアルミンはその双眸に涙をはって、エレンを見つめた。

首を下げたエレンの前に、リヴァイが立つ。 エレンは視線だけをリヴァイにあげたあと、微笑んだ。


「エレン・イェーガー」


広場にリヴァイの凛とした声が響く。しん、と場が静まった。


「お前は、俺達人類の希望だった」

「これまで多くの犠牲を払ってきた壁外調査も、お前のお 陰で大幅に犠牲が減った」

「お前は俺の誇りだ」

「俺の、最高の部下だ」

「エレン・イェーガー」

「俺の愛した、お前に、祝福を」


ふっと緩んだリヴァイの口元。 エレンは、それに目を見開いた後、つうっと涙を流した。 ブレードが高く上がる。

首を下げ目を閉じたエレンは、網膜に焼き付けたリヴァイ の微笑を思い出しながら、小さく微笑んだ。


ザンッ


血が、散る。ごろりと転がり落ちた首を抱え上げ、リヴァイは唇をかみ 締めた。

わあああっとミカサとアルミン、元104期訓練兵たちから泣き声があがる。

ハンジとエルヴィンは敬礼をしながら、エレンの最後を涙を流し見届けていた。

リヴァイは

リヴァイは抱えた首を胸元に寄せて、抱きしめる。 目を閉じたエレンの顔は、恐ろしいぐらいに美しい。

手に持ったブレードが、かちゃりと音をたてる。

意図に気がついたハンジが、悲鳴を上げた。


「リヴァイ!」


ザクッ


処刑台に舞った、2人の血。

一人は人類の希望と呼ばれた15歳の少年。

一人は人類最強と呼ばれた無敵の兵士。

エレンの頭を抱いたリヴァイは、敬礼の形で心臓をブレー ドで貫いていた。


「リヴァイッ・・あのばかっ・・・・バカ野 郎っ・・・!」

「・・これが、二人の選んだ結末だ」


エレンの頭を抱いたリヴァイは、そのまま前のめりに崩れ落ちた。

民衆から悲鳴が上がる。

憲兵団からざわめきが聞こえる。

エルヴィンは二人に近づくと、彼らの前に立ちとんっと敬礼の形をとった。

ハンジや、エレンの同期たちも後ろに続き、とんっと敬礼の形をとる。


「人類の栄誉と繁栄の為、その崇高な命を落とした勇敢な兵士に天での祝福を!心臓を捧げよ!」

「「「「「「ハッ!」」」」」」


涙を一筋流したエルヴィンが、叫んだ。

ミカサが、涙ながらに敬礼をする。アルミンが二人を見つめながら、嗚咽を零した。

ジャンが、サシャが、コニーが、クリスタが。

失った仲間に、兵士に敬礼を捧げる。


「エレン・・・僕は、僕は必ず海を・・見るよ・・・君と、リヴァイ兵長のぶんまでっ・・・・!」


アルミンが涙ながらに、そう零した。

「誰よりもっ・・・強くあろうとした・・・優しい・・・っ彼らに・・・・!」


どうか、祝福を。




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