※魔界王子、ウィリアム成り代わり、ケヴィン


幼き少女


星4歳。この頃すでに星は男装をしていた。 だが、それは今のように完璧ではなく、ときたま女の子の顔が覗く。


『ケヴィン!ここにいたのか!』

「星様、」


薔薇を摘んでいたケヴィンのもとに、星が駆け寄って来た。


「どうかいたしましたか?」

『しょこの鍵をあけてくれないか?』

「おや、閉まっておりましたか」

『うん。だからあけてくれ』

「畏まりました。少々お待ち下さいね」

『ん』


薔薇をメイドに渡し、ケヴィンは書庫へ向かう。 その後ろを名前はしっかりとした足どりでついていく。


『なぁ、ケヴィン』

「はい」

『急ぎのしごとはあるか?』

「いえ。今日のところはありませんが‥‥」

『な、なら‥‥‥一緒に本を、その、よ、読まないか‥‥?』


明後日の方向を向きながら言った名前の頬は赤い。 ケヴィンはにっこりと笑い、頷いた。


※ ※ ※ ※


『ケヴィン!ケヴィン!!』

「どういたしました?星様」

『これはどこの言葉だ?』

「これは‥‥ヘブライ語ですね」

『ヘブライ語というのか』

「はい」


ヘブライ語‥‥と呟きながら星は本をみつめていた。


『ぼく‥‥‥‥なんでかなぁ、なつかしく思うんだ』

「え?」

『この言葉。なんでだろうね』

「‥‥‥‥‥‥‥」


黙り込んでしまったケヴィンに星は首を傾げた。


『ケヴィン?』

「あ、すみません。 ‥‥‥星様、あちらの棚にガリレオ・ガリレイの本がありましたよ」

『なに!?』


顔を輝かせた星はケヴィンがさした棚へと走っていく。ケヴィンは今まで星が見ていた本をとじ、棚の一番高い奥へと押し込んだ。




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