※黒子のバスケ、アリスパロ、黒子総受(赤司寄り)


アリ●パロですが、原作とは一切関係ありません。 それどころか、原作に一切沿っていませんのであしからず。 キャラと設定だけが自由に動き回って る状況・・・



困ったな、笑えないな、と黒子は真剣に思った。 目の前で空になった皿をじっと眺めて溜息をつく。 一晩かけてつくったタルトが、すっかり姿を消してしまった。 汗だくになって、苦労して、王様に食べてもらおうと思ったパイなのに。 だいたい、パイって作るのが時間がかかる。 材料を揃えるのもそれを黒子の非力な腕で混ぜ合わせるのも、中に注ぐクリームを作るのも盛りつけるのも大変だった。 それもこれも、王様が笑顔で食べてくれるのを思い浮かべながら頑張って作ったというのに。黒子は空っぽの皿を見つめて溜息をつく。 どうやって説明しようかな、と脳裏に暴君・・・いやいや、王様の姿を映し出す。 皿に描かれた赤いハートのマークを見つめて、黒子―ハートの女王は再度深く深く溜息を吐き出した。

「裁判だ。」

見る者を圧倒する、ひれ伏せさせるその瞳をぎらりと輝かせて王様は言っ た。ですよね、と黒子も曖昧に賛同する。黒子の作ったものを誰かが盗んだにしろ食べてしまったにしろ、この王がそれを笑顔で見逃すはずがない。

「テツヤの物は僕の物。つまり、テツヤが作った物は僕の物ってことだろう?」

「そうですね。もともと、キミのために作った物ですから。」

「ならば尚更許し難いな。よし、急いで準備をさせろ。」

「赤司君、ほどほどにしてくださいね。」

「テツヤの・・・及び僕のタルトを盗んだ奴は親でも殺す。」

キミ、親いないじゃないですか・・・ とは、さすがの黒子も口に出さなかった。 赤司―王様はするりと黒子の頬に触れる。夕焼けの空のような瞳と、真昼の太陽のような瞳が同時に黒子を見つめる。 はいはい、と諦めたように頬にキスをしてやると、満足げに赤司が微笑ん だ。

「お前らまたそんなことで裁判とは・・・いい加減にするのだよ」

呆れたとばかりに2人の前に立ったのは緑間だった。 アンティークの時計をちらりと見、そして溜息をつく。 そんなことなもんか、大問題だ、至極真面目に赤司が言えば、特に逆らう気はない緑間は、片手にラッパ、そして 羊皮紙を持っている。 此度の裁判の進行役を任されたわけだが迷惑極まりない。 早い所家に帰って本を読みたい。そう思って黒子をちらりと見つめると、困ったように微笑まれる。 仕方なく緑間がこんな裁判に付き合ってやるのは黒子に頼まれたからだし、 家で緑間の帰りを待っている本は黒子に借りたものだ。 赤いハートを基調にしたドレスが驚くほど似合う、そう思ったのは喉の奥へと飲み込んだ。 正装に着替えた白ウサギ―緑間は、眼鏡のブリッジを押し上げて再び溜息をつく。 そうして、室内をちょろちょろしている金髪を見遣りさらにさらに溜息をつ いてしまったのだった。

「さて、ハートのジャック、言い訳はあるか。ないな。よし、いますぐ首を はねろ。」

「いえ、赤司君。それ言うのボクの役目なんで。」

「つーかオレはタルトなんて盗んでねえよ!」

噛みつくように王様に反論するハートのジャック―火神は、そしてちらりと黒子を見つめる。 その視線に気づいた黒子が僅かばかり首を傾げると、顔を真っ赤にして大慌てで目を逸らしてしまった。 笑顔で赤司が「首はね首はね首はね」と呪詛のように呟いている。 隣で赤司に肩を抱かれる黒子は、さっさとこの場を去りたいと思うのだが、 この裁判の原因が自分にもあると思うとなかなかそれを言い出せない。

「・・・とにかく、証人がいる。そいつを召喚するのだよ。」

「あー?なんっでオレがこんなトコ来ないといけねえんだよ!」

ぐいぐいとトランプ兵達に引きずられて現れたのは、褐色の肌を持つ帽子屋だ。 頭に申し訳程度に乗せられたシルクハットがお世辞も通用しないほどに似合っていない。おかしいですね、帽子屋なのに、と爆笑したいのを抑えてどこか冷静な頭で考える。 褐色の帽子屋―青峰は、法廷の一番高い場所にいる黒子を見つけて、ぱっと眼を輝かせた。

「よおテツ!久しぶりじゃねーか!」

「はい、お久しぶりです青峰君。 ・・・ぷっ、そ、その帽子どうしたんですか・・・」

「あ?こ、コレはさつきがかぶってけって・・・・! わ、笑うな!」

「・・・テツヤ、」

隣から低い声で名前を呼ばれて赤司を見る。 顔には笑みが浮かんでいるが、感情はどこも笑っていないことに気づき、しまったなと口を噤んだ。

「・・・大輝とどういう関係なんだ?」

「あ、いえ、あの、庭にたまにバスケをしにやってくるので、それで、」

「それだけ?」

「は、はい、」

なら許す、とポンポンと頭を叩かれて胸をなでおろす。 ちら、と青峰を見下すと究極に機嫌の悪そうな顔をしていた。 が、頭に乗っているのは愉快なシルクハットなので、どうにも迫力が出ない。

「赤司!てっめえテツにべたべた触ってんじゃねえよ!」

「テツヤは僕の妻だ。僕が触って何が悪い?」

そう言って自慢げに赤司が黒子の肩を強く抱き距離を縮めた。それに狂ったように声をあげるのは青峰だ。

「ああああああ!!!テメエ今すぐ離れろ!!テツはオレんだ!」

「聞き捨てならないな。」

「覚悟しとけよ赤司・・・・!!」

「いいだろう・・・ならば戦争だ!」

ばっと赤いマントを翻し―それにしてもやたらマントが似合う―王様・赤司はトランプの兵に命を下そうとしたが、黒子がそれを抑えこむ。

「あ、赤司君!落ち着いてください! 裁判の途中ですよ!」

「でもなテツヤ。大輝は僕に挑戦状をたたきつけたんだ。生かしてはおけない。」

「赤司君!」

ぎゅう、と腕に必死にしがみつかれ、 不覚にも赤司の胸がきゅんと鳴る。 が、そこまで青峰に固執するのかと面白くない気持ちになったのも事実だ。

「テツヤ、」

「赤司君、ボクはそんなことよりも、ボクが赤司君の為に作ったタルトを誰が盗んだのか・・・そっちの方が気になります。」

「テツヤ・・・」

「だから座ってください。ね?青峰君ならあとでいくらでも潰せますから。 」

聞き捨てならねえぞテツー!と遥か下から青峰が反論しているが、黒子と赤司にはそんなものはどこ吹く風だ。大人しく席に座った赤司に、黒子も胸を撫で下ろす。 これで青峰の命は繋がった。 何しろ庭でクロケー・・・じゃない、 バスケを一緒に出来る貴重な人材だ。 そう易々と赤司の手にかけられるわけにはいかない。
緑間の命令で強制的に口を縛られ席に座らされた青峰と入れ替わりに、今度はコックが入ってきた。やたらと背が高く眠そうな顔で両手にはお菓子を持っているコック―紫原 が、のたのたと歩いてくる。

「・・・敦か。」

「紫原君ですか。」

「・・・ゴホンッ! 紫原、証言をするのだよ。」

あー赤ちーん黒ちーん、と2人に向かって手を振る紫原につられるように、赤司と黒子も笑顔で手を振る。 轡から抜けだした青峰が今だに黒子の肩を抱いている赤司に「テツに触ってんじゃねー!!赤司ー!!」と叫ぶ声が聞こえるが、コックを前に2人はお花畑へ招待されていた。 何しろこの2人、コックを我が子のように溺愛している。

「えー、証言―?やだー、オレ何もしてねーしー」

「紫原、そういうことじゃなくてだな、」

「オレタルトは好きだけどー、ちゃんと赤ちんと黒ちんにいつも聞いてから食べてるもん。ねー?」

「はい、そうですね。」

「まあ・・・食べたのが敦なら・・・ 仕方ないかな。」

真剣な顔で2人はそうのたまう。 何なのだこいつら、と緑間は痛む頭を抱え込む。 さっきほんの少しでも黒子に傾いた自分の安い心を捨て去りたい。 まあでもそれだけ黒子に溺愛されている紫原うらやま・・・いやいや、何でもない。 首を振って、フラフラと赤司と黒子の元へ向かう紫原を見送り、最後の証人の名を呼んだ。 法廷の全ての者の目が、鮮やかな金髪のアリスのもとへと注がれる。

「・・・え! オレッスか?!」

「いいから早く出るのだよ。」

証言台に立たされたアリス―黄瀬は落ち着かない様子で法廷内を見渡している。 そして黒子を見つめたと思ったら、尻尾があればぶんぶん振っているんじゃなかろうかという勢いで笑顔になった。

「黒子っちー!!久しぶりッスー!!」

「・・・テツヤ、知っているのか?」

「いえ、全然全くこれっぽっちも。」

「えー!!ちょ、一緒にバスケやったじゃないスか!また一緒にバスケしよう!」

「・・・と言っているが。」

「赤司君はボクの言うことより、あの変態アリスの言うことを信じるんですか。」

うる、と涙目で赤司を見上げれば、うろたえたような赤司の瞳が揺れる。 ちなみにそれを遠巻きに見ていた青峰、緑間、黄瀬もぐっと息を詰めた。 わー黒ちん可愛いーと至近距離で満足そうにそれを堪能しているのは紫原だ。

「馬鹿だな。お前を信じるに決まってるだろう?」

「・・・赤司君・・・!」

「ちょ!ラブシーン禁止スよー!!」

遠くでぎゃんぎゃん喚いている駄犬をよそに、2人はひしと抱き合う。 今にも赤司に向かっていきそうな青峰、火神を周囲のトランプ兵達が必死で抑えつけているが効果のほどは薄そうだ。 はあ、とまたもズキズキ痛むこめかみを抑えて息を吐く。 そうして証言台に立つ黄瀬の口元についている食べカスに気づいた。

「・・・時に黄瀬。」

「何スか、緑間っち。」

「・・・お前のその口端についているのは・・・タルトの食べカスなのではないか?」

「え、あ、ホントだー!いやー、黒子っちが赤司っちに一生懸命タルト作ってたのは見てたんスけどね。 黒子っちが生手で触ったイチゴはぁはぁ、とか黒子っちの体温がしみ込んだタルトはぁはぁと思ってたら全部食べちゃって!」

しん、と法廷内が静まりかえっていることに、黄瀬はまったく気付かない。 見れば黄瀬の着ている白いエプロンド レスには、ところどころ赤いジャムが散っている。

「めっちゃおいしかったスよー!さすが黒子っち・・・て、アレ。」

ずもももも、と異様な邪気を放つ空気に囲まれているのを察知して、ようやく黄瀬は口を噤む。そして己の失言に気づくと慌てて口を抑えたが後の祭り。 口から飛び出してしまった言葉は取り消せなかった。

「涼太、お前だったのか・・・僕のテツヤの作った僕のタルトを食べたのは。」

「許し難いのだよ。お前、そんな変態的な目で黒子を・・・」

「黄瀬ぇ。テメ、覚悟出来てんだろうな・・・」

「黒ちんのタルト、オレの大好物なんだよねえ。それ独り占めするとか良いと思ってんのかよ。」

あれ、ここでアリスを抑えるのってトランプの兵の役目じゃ、と冷や汗をだらだら垂れ流しながら、黒子に救いを求める。 優しい黒子のこと、何とか諫めてくれるだろうと信じて。 壇上の黒子は、ゆっくりと微笑んだ。

「とりあえず、首はねておきますか。」

にっこりといい笑顔でそう告げた黒子の言葉を皮切りに、黄瀬は意識を失った。


 * * *

「はっ!!」

目を覚ますと、そこには空へ真っ直ぐ伸びた木があった。 さわさわと頬を撫ぜてゆく風は涼やかで大人しい。

「おー、起きたか。」

声のした方へと目を向けると、雑誌を読んでいる火神が黄瀬に声をかけた。

「お、オレ・・・??!?!」

「オマエ休憩するつってしばらく寝てたぜ。魘されてたけど。」

「ゆ、ゆめ・・・」

「ハァ?」

「すっげえ怖い夢見たッス・・・」

コートの中では、赤司・黒子・紫原V S緑間・青峰の試合が行われていた。 緑間と青峰は「何の罰ゲームだ!」と泣きそうになりながら試合をしている。 確かに赤司達3人と、緑間・青峰では相性が悪すぎる。

「ま、コレでも食って落ち着け。」

「おお!うまそうスね!」

いただきまーす、と黄瀬が口にしたのは卵サンドだ。 卵のゆで具合が絶妙である。 よほど腹が減っていたのか、黄瀬はそれを全てぺろりと食べてしまった。

「ごちッス!」

「ああ・・・って、おまっ!全部食ったのかよ!」

「へ?ダメだったスか?」

「これ・・・黒子が全員にって作ってきたヤツなんだけど・・・ しかも赤司と青峰はまだ食ってねえぞ。」

「え・・・!」

黄瀬が顔を青ざめさせていると、ポン、と両肩を叩かれる。 叩かれたと思ったら、今度は人ならざる力で両肩をぎぎぎぎぎと握りしめられた。 しかし、今の黄瀬には痛いと悲鳴をあげることすら許されていない。

「涼太。ちょっと向こうで話をしようか。」

「黄瀬ぇ。いい度胸してんなあ」

あ、これもう駄目だ。その場にいた全員が、団結して黄瀬に合掌をした。


アウトかセーフかでいったらギリギリアウトだよね

つまりこれって間違いなく死亡フラグなわけですよね。



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桜様に捧げます。1万打リクにてちょうだいしました、 キセキ×黒でアリスパロでした!特に誰が誰、という詳細はなかったのでアミダで決めた結果こうなりました ^^ どんまい黄瀬ww
楽しんで頂けたら幸いです。私は楽しかったです^^ でもこれアリスパロになってんのかなと不安もありますが・・・。 そして思ったより赤×黒要素が強くなってしまってすみません!!
リクエストありがとうございました!





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