ある日のこと。

スキンシップが最初の頃より多くなっていた私は。

松寿丸さん喧嘩をした。



原因としては"優しい松寿丸さん"だった。




04《太陽と喧嘩》



「貴様、」

どういえばいいのかわからず言葉はそこで途切られた。


対してやることもないのでベッドの上、私は本を読んでいた。

・・・本当は松寿丸さんがやってくるのを待っているだけだけれども。

そこで乱暴にはいってきた松寿丸さんが荒々しく私を呼んだ。

私も『貴様』だけでは何に対しての事を言っているのかさっぱりで首をかしげた。

ただ、怒っているということだけはわかった。

「どうしたのですか?」

「〜どうもこうもではない!何故、もう一人の存在が出てきたことを黙っておった!!」

もう一人の自分。

そこで"優しい松寿丸さん"の事を言っていることがわかった。

「・・・黙っておいたほうがいいかな、と思いまして」

いわゆる二重人格である彼。

伝えるべきか伝えないべきか―――それを考えれば伝えないまま、にしておいたほうが私にも彼にも都合がいいだろうと思っていた。


「我を気違い扱いするな!!!」



「――――っく」

突然の事にわけがわからなくなった。

ただ、突然の衝撃に、喉の苦痛に恐怖した。

「あ・・・」

のどが絞まる。締まる。絞まる。

息が吸えなくなり、私は今、松寿丸さんに首を絞められているのということに気付いた。

突然の暴行に私は彼に裏切られた様な気を起こしてしまう。

どうして。どうして。私は。私は。

泣いてしまいたい。むしろもう泣く寸前だった。

目一杯に涙が溜まり――――ポトリと雫が頬を伝った。

「――――・・・松寿丸さ・・・ん」

その雫は冷たい。

私は溜まった涙で歪んだ視界の中、松寿丸さんの目から涙が零れ落ちたのがわかった。


ああ。

ああ。





私はとんだ勘違いをしていたのではないか。





一番辛いのは、辛かったのは松寿丸さんの方じゃないだろうか。



だって、ほら。

松寿丸さん、泣いてる――――。



酸素を求める肺が心臓が一際高く、鼓動を始めていく。

絞められて空気を体内に送れない私はそれでも絞められた喉で言葉を紡ごうと吐く。

「・・・・・・・っど・・・・して」

どうして、貴方は泣いているの?


哀しいの?

辛いの?

怖いの?




何が、怖いの?