《繋がる絆》




星々の光のない空。

月さえも見つからず暗いというのに自然と明るい。


さて、ここはどこだろうと我は周囲を見渡すと見慣れた鳥居があった。

ここは、厳島だ。

我の居場所。



我は、帰ってきたのだと安堵と同時につかさが傍からいなくなった悲哀を感じていた。

帰ってきた。

帰ってきてしまった。

否。


ただ一人の空間で目をと閉じた。

暗い瞼の裏にうつるのは、泣きながらも微笑み我を見送る愛しい女子―――。


「―――――元就さんよぉ」

あの喧しい同盟国の長曾我部の声が聞こえ瞼を開いた。

先程とは違い眩しい日差しが我を照らしていた。


「あんなとこで寝てると風邪引くぜ?」

そしてその日差しを頭で遮るのは声の主である長宗我部。

何があったのか理解できずに、上半身を起こすとびしょぬれに濡れていた。

木材の床に染み込んだ水の跡を辿ると、厳島の象徴でもある大鳥居のある海辺へと続いていた。

そこで我は何者かにそこに突き落とされた事を思い出した。

そして、そこから・・・始まり、終わったのだ。


「・・・・・・そうだな」

不思議と喧しい喧しいと邪険にしていたこやつに対してなんとも思わなかった。

今まで、喧しく、隣にいるだけで苛々としていたが今はその名残さえもない。

あの、短い時間が我を変えたらしい。


だが、嫌ではなかった。


「・・・・・・・・・・・・もう、風邪引いちまったのか?」

我が変わったことを長宗我部も感じ取ったのか、我の代わりように慌て額に手を当てて熱を測り始めた。

額にあたる手が、暖かい。

「・・・・・・・・・・・・・・・熱、はねえな。どうしたんだ毛利さんよぉ」

「どうもしていない。我は。本来の、毛利元就に戻ったまでよ」

「????????」

疑問符を浮かべる長宗我部は暫く首を捻り唸った後、結果的に悩みの答えが出なかったのか頭をかき「まあ、いいや」と自己完結していた。

別に貴様にわかってもらわなくても結構。



この気持ちは。

この心は。



つかさだけ、わかっていればよい。



「長宗我部。暇ならば我につきあえ」

「は?!え、あ、いいけどよ。どういう風のふきま――」

「ぐちぐちと喧しい。だまって付き合えばよいのだ」

「へぇへぇ、了解」





我とつかさにしかない絆糸が確かにここにある。

それだけで、我らはいつまでも二人一緒にいると、わかる。





いつかこの絆の糸を辿り、つかさに会いに行こう。

そしてそのときになったらお前に、つかさだけに告げようぞ。








"愛している"とな――――――。



fin

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