私は、幸せです。

貴方のおかげで。

幸せです。



だから、私は笑います。

"本当"の笑顔で貴方を――――――



05《さようなら》





胸がやけにざわついた。


今までこんな感じを味わったことがなくて、すぐにこれが"何かの前兆"を知らせるものなのだとわかった。

やけに静かな部屋の中で、胸のざわつきに目を覚ました私は針の音を刻む時計をみた。



―――――――深夜4時。





4時といってもまだ日は昇っておらず、外は暗い。

カラスが高く鳴いているのが聴こえる。


いつも通りなのに、いつもと違う空気。

暗闇で誰かが動いた。


「――――――・・・松寿丸さん?」

今、この家にいるのは私と松寿丸さんだけで。

けど目の前の暗闇で動きを止めた存在が泥棒になんてみえなかった。

暫くの沈黙のうち、静寂な空気に声が振動した。

「―――――・・・起きたのか」

テンションの上がらない声。

その酷く落ち着いた声は私の心を不安にさせた。






目の前から消えてしまう。




消えて、しまう―――――――・・・。





「・・・・・・帰る・・・んですか?」



駆け寄りたい衝動を抑えながら、闇になれた目でその先をみつめる。

けれども肝心の松寿丸さんの姿は未だ闇の中で。


その闇の奥から。

「ああ」

一言。

それだけを返してきた。