毎日顔を見に来るようになった肋角さんは、今日の私の調子を聞いて一言二言かわしてさっていく。優しい口調で、話す肋角さんをみていると、安堵してしまうのは私がここの生活に慣れてしまってきたからなのだろうか。 それとも、肋角さんだけが唯一、危害を加えないと感じたからなのだろうか。 今日も、誰かが、やってくる。 その歪になった想いをぶつけるために。 「水咽ー!遊びにきたぜー!」 「・・・こっちにくんなっ」 目の前で円満の笑みを浮かべてやってきた平腹。 拒絶の言葉を吐いても、どうとも思っていない彼は座敷牢の鍵を開けて中にはいってきた。閉じられ鉄柵の間から腕を外側にだし、鍵を閉め直す平腹。ジャラリと音をたてた鍵は彼のポケットへ。 「なんでだよー?俺と遊ぼうぜ!」 「こっちにくんな、こっちにくんなこっちにくんな!」 逃げられる限り距離をとって逃げる。 こいつは、この時間帯――といってももう時間がわからないが、毒入りの夕飯を佐疫が持ってくる。それの後、にくる、つまり夜、あるいは深夜の時間帯にこいつは、やってくる。 座敷牢にあるカンテラのわずかな灯りに映る平腹の顔は、もう、歪んでいる。これから始まる”遊び”にどんどん笑みが濃くなっていく。 「あっ」 「お前さー・・・」 鎖が掴まれ引っ張られた。首に痛みが走り引きずられ平腹の足元へ。逃げようと体を起こす。しかし平腹の手が肩をつかみ仰向けに倒した。平腹の顔が目の前にくる。その見開いた目は、確かにくるっている。ああ。あああ。 「毎回毎回俺から逃げんなよっ!」 「あ゛っ!」 肩に掛かる力が骨を砕く。 平腹の手が衣類を引き裂いた。何枚目だろうか。こいつはいつもこうやって破る。破って、それで。 破かれ裸となった私の躰に口をつけてなめまわす。 「・・・っ・・・やめ、やだ、やだ」 「嘘つけー。いつもあえいでるじゃんか、よ!」 「―――っひ!」 慣らされていない。濡れてもない秘部に押し込まれる平腹のもの。擦りあう痛みに震える。 「あー、水咽の中きもちー」 「っ・・・ひ、う・・・!」 こちらの気持ちも意思も、何もかも関係なしに腰を揺らしたたきつけてくる。 「っ・・・い、ぁ・・・あっ・・・!」 「水咽・・・!水咽!」 血に、遅れてやってきた愛液にぬめりが良くなる。そこでやっと水咽は性交による快楽が押し寄せてくるのだが、生理的、動物的なそれに心を任せることができない。否、任せたらいけないのだ。水咽の回りは異常で、己だけが正常で。 正常で、いなければ。そうしないとなにかが、完全におかしくなってしまい、そう、おかしくなって。 「やっ・・・ぁ・・・!」 「―――っ、あ、出る・・・!」 「っ・・・あ、っぁ!!」 動きがはやくなり平腹が強く抱きしめてくる。私よりも体温の高いからだに抱かれ唇を噛みしめて目をつよく瞑る。さっさと終わってしまえ。そう思う。 中で震えるそれ。出し終えた平腹は、満足したらしくものを抜き取る汚れた部分をふき取る。 「獄卒は妊娠しねえから便利だよな!」 「・・・、だけど」 ドロリとあふれ出てくるそれを無感情に見下ろしながら、ポツリとこぼす。 確かに妊娠はしない。だけど、それでも、こんな、片方だけ、満足する、よ、う・・・な・・・ ・・・・。 「・・・・・・・・・、かえれ」 「ふぉ?どうした水咽泣いてんのか?なんで?」 何を。私は。 浮かべてしまったその思いに、ふたをする。 けれど、一度でも覗いてしまったそれに私の心は精神は、異常をきたす。歪む。エラーをおこす。 「うるさい、かえれよ、はやく、はやくはやくはやくはやく!」 平腹を殴る。けれど対してきいていない。それが厭で悔しい。それでも笑いながら座敷牢の外に出る平腹を殺してしまいたい。ああ、なんで、こんな気持ちになるのか。なんで、こんな。 平腹が帰って、独りになった座敷牢の中。 膣に指を突っ込む。 ぐちゅりと濡れる音を響かせる。中の精液をかき出す。 「・・・っ・・・ふ、っ・・・ぁ」 私は泣いた。 この現状に。 止まらない指に。 もっと、ほしいと思ってしまった自身に。 ないた。 |