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水咽は最近になって任務に出るようになった。

とはいっても力はまだなく、武器も最近になってやっと扱うようになったばかり。だから任務といっても複数での任務の時に先輩達の動きを見せるために、そして補助をさせるためについていく程度。

それでも水咽からしたら任務に出るということは獄卒として少しは認められたという事でもあり嬉々としてついていく。

今回の任務は捨てられ廃墟と化した娯楽施設。室内遊園地だ。とはいっても廃墟と化して壁も崩れているためもう室内とは呼べないが、それでもジェットコースターのレーンやチケット売場の小さな小屋などはまだ残っている。雑草で覆われてはいるが。

「斬島ー、遊園地!」
「そうだな」
「斬島は絶叫系は平気なほう?」
「・・・絶叫系?なんだそれは」

故に今回も複数メンバーでの任務。斬島と佐疫と田噛の3人に加えて水咽が加わっての四人。

まだ数える程しか任務についてきてはいないがこのメンバーは結構珍しい組み合わせじゃないかと手前を歩く斬島へ、絶叫系とは、の説明をどう言うべきなのか悩みながら思った。

「絶叫系っていうのは・・・ジェットコースターとか、ええとイーグルとか・・・」
「ジェットコースター?イーグル?」
「あー・・・えー・・・つまり、落ちたり、早いスピードではしったりするのが絶叫系で、そういうの平気な人?」
「落ちたり・・・?以前、高層ビルから突き落とされたことがある。それと電車の上で怪異を追いかけたりもしたな」
「・・・」

絶叫系とはなんだったか。水咽もそうだが死んでも生き返る。人として生きていた頃の絶叫マシーンとは恐怖を味わうための遊戯だったが、獄卒となればそれはもはや必要なんてなかった。

ただ、会話の内容がまったく違う話だということに水咽はどう言葉を返せばいいのかわからない。


そうなんですかははは、で終わらせるのが一番か。

「おれは平気かなあ」
「俺も平気だ。・・・で、そういうお前は絶叫系平気なのか?」
「田噛!佐疫!」
「任務は終わったよ」
「そうか」

二手に分かれていた二人が悪霊の首根っこを掴んで戻ってきた。斬島と捜索するだけで終わってしまった水咽だったが、田噛の言葉に少しだけ恥ずかしそうに「苦手」とだけ返した。

「ジェットコースターなんてあの猛スピードで駆け抜ける感覚が怖いし、落下系のだってあの中に内蔵も心臓も浮く感覚にぞわってす、る・・・田噛、何考えてる?ねえ?何、をおぉぉおおぉぉ!?」

悪霊を佐疫に預けた田噛が、あのむすっとした口元をニヤリと釣り上げた。橙色のだるそうな目がぎらりと愉悦を混じらせ水咽を掴んだ。

「何処だっけな。すげー怖い絶叫系があるところ」
「ふじゅきゅうアイランドだったかな。お化け屋敷も怖いみたいだね」
「ふじゅきゅうあいらんど?」
「離してっ・・・!離して!」
「斬島は行ったことないよね」
「こいつ受け渡したら行くか、なあ水咽」
「いやー!いやー!!いやー!!!」

しっかりと掴まれて逃げられない。駆けようとする足が何度も地面をけるが逃げられない。水咽は叫ぶ。必死に叫んだ。絶叫系は嫌いだから。マジ嫌いだから!そう叫んだ。

「水咽が嫌がっているようだが・・・?」
「いやよいやよも好きのうちだよ」
「そーだ。面白いぞ遊園地」
「面白いのは遊園地じゃなくて私じゃないの!?ねえええ!?」
「そうか。ならば午後は暇をもらってそこにいくとしよう」
「賛成」
「よし、いくぞ」






「いいぃぃやぁぁぁぁぁあぁ!!!!」