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獄卒になってからの日課。
それはパシリ。なんてこったい。

「水咽ー!報告書かいてくんねー?」
「それは自分でやってくれませんかね?今、掃除で忙しいんですよー、見てわかりませんですかねええ?」
「いいじゃん!お前、後輩だろ?パシリだろ?!」
「パシリじゃないし後輩だし!後輩イコールパシリで繋げないでください!」
「えー!!やれよ!!」
「いや!」
「やれ!」
「いや!」

パシリといっても雑用係であり、決して黄色い目の獄卒、平腹が書くべき報告書を書いたりとすることではない。

箒でゴミをはきながらとなりでぎゃあぎゃあ騒ぐ平腹に対抗しておく。平腹は単純だし我侭だ。

こうしてやってほしいことを受けてくれなくなると―――それ!

飛びかかろうとしてきた平腹を避ける。あ!避けんな!と牙を向く平腹から逃げるようにさっとちりとりにゴミを入れて早足でその場から去っていく。

「水咽のばかーーー!!あほーーー!!あーんぽーんたんーーー!!!」

背後からいつまでも叫んでいる平腹を無視して別の場所を掃除すべく廊下を歩いて行った。




ここに来てから数日となったが、獄卒となったからといって突然強くなるわけでもなし。

そりゃあそうだな、と思いながらじゃあ何をすればいいのかというと先ほどいったように雑用係が主でしばらくはそれと並行して身体能力の強化をしなければならない。

廊下の掃除を終わらせた私は掃除用具入れに箒とチリトリを戻して肋角さんの執務室へと訪れる。

ノックをすれば肋角さんの「入れ」という声。

「肋角さん掃除終わりました。先ほど言ってた書類とりにきました」
「ご苦労。まだ雑用係だがどうだ?なれたか?」
「いやー・・・なれました。あまりにも癖の強い人達がいるんで雑用係だけでも鍛えられそうです」
「はははっ、そうだな。だがまだまだこれからだ」
「はい」

事後報告の書類を受け取る。今月あった任務の報告その後の事が書かれた書類をそれぞれの獄卒へと渡しに行くのだ。

「それが終わったなら今日の仕事は終わりだ」
「はい」

お辞儀をして廊下に出る。

まずは誰から――と一枚目をみると任務担当者は平腹。

ゲッ、と声をだしてしまい後回しにしたい衝動にかられる。むしろ破いて何も見なかったことにしたい。それができないのはこれが仕事でお金をもらってるからだ。うわー。うわー。さっきあって騒ぎ合ってたのにまーた会わなきゃいけないのか・・・。絶対追い回される。

いっきに気分を重くしていまった私は平腹の自室をノックする。「水咽だけど」といえば「水咽ぁ!」と超笑顔で扉を開けて私を引きずり込もうとうでをつかむ。

引き込まれてたまるか!と全身の筋肉に力を入れて引く、もこいつも木舌同様力が強いやつで一秒と踏ん張りはきかなかった。

部屋に引きずり込まれる。
引きずり込まれ扉を締められる直前に「誰かー!!!犯される!!!!」と大声を叫んだ。

誰かしら来てくれるだろう。
というか来てくれ。

佐疫とか佐疫とか佐疫とか斬島とか斬島とか斬島とか!!

「お前よー!本当に犯すからな!!」
「そしたら肋角さんに報告してやるあることないことも含めてね!!」
「ひでーやつだな水咽!」
「強引に引きずり込む平腹のほうがひどいわ!」
「むー」
「はあー・・・はい、事後報告書」
「どーも」

互いに感情的になる言い合いを終わらせた。どっちも疲れたっていうのが正しい。毎日どうでもいいことで言い合ってるから肺活量が半端ない。少しヒリヒリする喉に唾という水分を流しながら報告書に目を通したのを見届けると部屋から出ようとする。

手をつかまれた。


「お前女っけないから、女っけだしたら興奮しそーだよな」
「突然何言ってるんですか変態」

書類をはさんだファイルで平腹の額を殴る。いってええ!と手を離したすきに部屋を出ていった。

「水咽、何かあったのか」
「斬島。なんとかなったなんとか変態から逃げられた。あ、これ事後報告書」
「ああ、ありがとう」

書類に目を通したのを確認してじゃあ、と斬島と別れる。

途中何故か血のついたツルハシを持つ田噛にであったので渡しておく。

去ろうとしたとき「おい、パシリ」と止められ木舌の死体がもうちょっと先の廊下に転がってるから片してキレイにしておけとのこと。

犯人お前だろ絶対。

しかもこの先って朝方私が掃除したところじゃねーか。ざけんなって睨んだらそのだるそうな目が少し見開きツルハシを手のひらで叩いて脅しを強調してきやがった。

このやろう!


「うぐぐ・・・」

とりあえず先に書類を渡してからだ。木舌は死体になってるから最後にでも。

佐疫を探す。彼の自室にはいなかったのでそうなると休憩室にいるかもしれない。彼は花を育てるのだ好きなそうで休憩室に彼が育てている花が幾つか飾られているのだ。それで休憩中にそれらに水やりをするのだとか。

佐疫が一番まともで気が楽になる。

獄卒になって彼らと過ごし始めて彼といることが一番一番いっちばん楽だ。
彼の爪垢を飲ませてやりたい。

田噛とか木舌とか平腹とか平腹とか平腹とかあと谷裂とか。

「げ」

「先輩に向かってげとはなんだ」


休憩室に向かう途中にであってしまった谷裂。

生者の時、保護対象であるはずの生者であった私を殴りやがったやつ。

怒鳴られて少し畏縮してしまうもだんだんと苛々としてきてけど先輩なのでできる限り不自然な笑顔を見せながら書類を渡す。

書類を持っていた指に力を込めて紙を歪ませる、という行為つきで。
奪い取るように乱暴に手にとった谷裂。貴様ぁ、という低い声。おおこわいこわい。

追いかけられる前に逃げるべく、走り出す。休憩室の扉を見つけて飛び込んだ。

部屋の外の扉の先の廊下から殺気を感じる気がして胸をドキドキさせる。寿命が縮む。