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―――あっけなく終わってしまった。




斬島があれだけ苦戦していた亡者は完全に一人の世界の中だった。

つかさを守らないと。つかさを。つかさを。そうつぶやくだけ。壊れている。それでも亡者であり生者を殺した悪霊であるので捕縛した。実に簡単だった。

簡単すぎて全員集まってるのがなんともシュールに思えてくるレベル。

「・・・任務完了、したけど拍子抜けだなー」
「そうだよなあ!もっとつええかと思ったけどな」
「順調に任務完了できてよかったじゃないか」

さっきの怪異のほうが手応えあったな、と木舌と平腹。何事もなく終わったからいいじゃないかと佐疫。面倒事がへった、と田噛。「私語は慎め!」と亡者を掴み苛々と歩き出す谷裂。

「あとは生者を保護するだけだな」

こちらのほうが危なさそうだからと佐疫があそこで待つように、とおいてきた生者。先ほどの戦いで怪異が怯え近寄ってくることはまずないと想定していたからだろう。


異界の出入り口付近にいるはずのつかさだが、戻ってきたところには誰もいなかった。
そんな・・・!と佐疫に焦りの顔が浮かんだ。

「どこに行きやがったあの女・・・」
「帰ったんじゃねーの?」
「探さないとっ」








「ここにいる」




「「「「「「肋角さん・・・!?」」」」」」

このままだと怪異に襲われる可能性がある。
そう、捜索をしようとする佐疫たちの前に現れたのは上司である肋角だった。上司が、まさか現場にくるとは思っていなかった面々はそれぞれに驚きの表情をみせている。

そしてその肋角さんの傍らにここにいなかったつかさの姿。つかさの向こうが透けて見えていて息を呑む。

「みな、ご苦労だった」

「は、はい・・・、しかし」

谷裂が悔しそうにつかさをみる。
生者を保護できなかったそれに任務の不完全を感じたのだ。

谷裂の気持ちを汲み取る肋角は「生者を保護できなかったのは終わった事。何かしらの罰は上から下るだろうがこれも私の仕切不足だ、すまない」と謝る。

上司であり父でもある彼に謝罪の言葉を吐かせてしまった事に一斉に肋角さんの責任じゃないです、と声を上げる。

「オレたちがもっと生者に気を配っていれば・・・!」
「そうです!」

もういい、と手のひらで制止させる肋角。傍らにいたつかさの肩に手を置いて一歩前へと歩み出させる。

生者から亡者となってしまった彼女だったが動揺の様子は一切なく生きていた頃となにも変わらない。変わったのは体が透けているというだけ。

「そしてこの場で言うのにはふさわしくないが皆が揃っているので言おう」

部下を見渡し不敵な笑みを浮かべる肋角。
つかさもそれに続き力の抜けた笑み。


「新しい仲間だ。よろしく頼む」
「・・・・・・よろしくー」










「「「「「「は?はぁ―――!?」」」」」




完全な予想外に誰もが声をあげた。