「―――――、」 また夢だ。なんだろう。なんだか段々と近づいてきてるような。どんどんあの夢をみる回数が増えてる気がする。それにだんだん内容もはっきりしてきて、あの、痛みも、苦しみも、全部、目を覚ましてもこの身体に残る。なんなんだろう。本当に、なにかよくないものが俺をどうにかしようとしてるんだろうか。 斬島が言ってた様に肋角さんに相談した方がいいんだろうか。 けど。 けど。 けど。 「・・・迷惑、かけるのは」 怖い。 相談した方がいい。肋角さんはきっと親身になって聞いてくれるし解決の方向に導いてくれると思う。けど。それでもこの夢で脆くなってる俺の心は不安要素を月々に見つけてはそれを拒絶する。迷惑だから。怖いから。と。 結局、俺は肋角さんに相談できなくて、卑怯にもいつかの勝負の勝利で手に入れた平腹に対しての命令権を使った。 一緒に母親のいる精神病院にいってほしいと。 平腹は嫌な顔も怪しむ気配もなくいつもの円満な笑顔で「おっけー!」と了承してくれてついてきてくれる平腹と相談できない肋角さんに申し訳なさを感じながら現世へと向かった。 まだ生きているも、精神が壊れ呆然と生を全うしているだけの母の所へ。夢にあれだけ母がでてくるんだから、きっと、たぶん、母を見れば何か解決策が見つかるんじゃないかって思った。 幼少化してしまったあの時のように―――― 「ホント悪いなー平腹」 「気にすんなって!むしろこれだけならラッキーだしな!」 「まあなー・・・」 俺と田噛と平腹とこの三人でよく任務やゲームで命令権をかけた勝負をする。俺が勝つことはあまりないけど田噛は性格は鬼畜だけどそういう勝負事は公平にするのが良いらしくよく田噛と組んだり、逆に平腹と組んだりと考慮してくれる。 んで、まあ勝った方に命令権ひとつはいるんだけど、けっこーえぐいっていうかひどい命令が飛び交う。特に精神的方面でキツイ命令権を出すのは田噛で真っ裸で館を徘徊しろだの肋角さんのコートをめくりあげてこいだのと一歩間違えば一生もののトラウマが埋め込まれるような命令をしてくる。 俺なんかはよく木舌に対してハグしてこいだのキスしてこいだのと俺の過去のトラウマを抉る様な事をしてくる。お、思い出しただけでしゃがみこんでうじうじとキノコはやせるレベルだ。 「けど、お前の親生きてたんだなー」 「まあ、50年ぐらい前だから70か80歳で老人だけどなー」 んで平腹は無理系な命令をしてくる。こいつは田噛とは別の意味でやっかいで、谷裂と組手して勝てだとかジャンプで屋根まで跳ねろだとか、あれだ、物理的に無理な事をやれとかほざいてくるわけだ。できるわけねーよな。 田噛も平腹の命令ひとつとして実行したことねえ。できるか!って殴ってるな。 精神病院の廊下を歩いてたどり着いた部屋。俺の母親がいる部屋は他の部屋と比べて静かで静かすぎる。これで獄卒となってから会うのは二度目になる。夢の内容に恐怖を感じてこの先にいる母親に怯える気持ちを抱えつつ中へと。 そこに広がってたのは真っ暗闇だった。 「あ?」 「え?」 身体がグイと暗闇に捕まる。 あ、逃げなきゃ。 そう思う前に俺の身体はこの黒一色の中に引き寄せられた。視界の端で同じように思考が追いついてない平腹の顔が見えて、そこでドプンと闇の中に埋まった。 マジか |