子供たちの幽霊達が廃墟に入ってきた生者に悪戯をしている、と任務がおりてきた。命を奪ったりとか悪いことはしてないらしーんだけど、子供っていうのは純粋故に時が立てば生きた者に危害を加える亡者に変貌しかねない――っていうことで佐疫と一緒にその子供たちがいる廃墟に赴くことになった。 んだけど。 廃墟に入って早々、佐疫が鏡の中に閉じ込められた。鏡の怪!?とか思ったけどそういう訳でなくて子供たちの笑い声が聞こえてきた。 遊ぼうって。 『遊ぼう!』 『遊ぼう!!』 『僕たちを捕まえたらきれーなお兄さん返してあげる!』 「はあ?!」 廃墟中から聞こえる笑い声とたくさんの足音。何人いるんだよ!! 目の前の姿見の鏡の中で鏡を叩いている佐疫。声は聞こえない。ただ、俺を心配してどうにか出ようと焦っているみたいで。周囲から聞こえる声達。 とりあえず、捕まえない事には佐疫は外にでれない。 「佐疫!俺、子供たち捕まえてくる!」 「・・・!・・・!!」 何か言ってるけどわからない。とりあえず、鏡越しに表面をなぞっていってくる、とかけば佐疫は下唇を噛みしめつつ頷いた。同じように佐疫も表面をなぞり、きをつけてね、と。安心させるために俺は笑って強くうなづいた。 『こっちだよこっち!』 『おそいよー!』 『きゃー!』 「ああああ、もう!お前らとまれ!走るな!!」 『きゃはははは!』 声がする方に走っても見えるのは角を曲がる背姿だけで、子供ってこんなにすばしっこいもんだったけか?といつまでも捕まらない現状に頭を抱えて叫んだ。 なんだし!なんだし!!お前らなんでそんなに早いの!?足にジェット機でもついてんの!?ねえ!?つうか子供数多いはずなのに一人として正面から姿見てないんですけど!!! ぬあああ!!くっそ!!!佐疫助けらんねえじゃんか!!! 佐疫に泣きつきたいぐらいだよ!!!!できねーけど!!! 笑い声に、足音が背後から聞こえて「そこかぁ!!!」と振り返るけど誰もいない。 そうしてると今度は正面側から笑い声が聞こえて『そっちじゃないよこっちだよー!』と笑うもんだからチキショー!!と軍帽を床にたたきつけた。 「獄卒をからかうんじゃありません!!!!」 『こっちー!』 『ばあ』 「ぎゃあああ!!」 真横から聞こえてきた声に反射的に向けば壁から子供の顔だけが生えていて思わず叫んでしまう。思った以上の驚きに満足した子供の幽霊はまた『キャハハハ!』と笑いながらドタバタとはしっていく。 そして無音、無言。 「さえきいいい・・・」 もうやだ!佐疫助けて!俺、無理! 助けなきゃいけない佐疫に助けて、と思いながら佐疫が閉じ込められている姿見の鏡の元にいったん戻る。佐疫は真剣そうに鏡から覗ける範囲で様子を見ていて、俺の姿を確認すると頬を緩め安堵の笑みをみせてくれて俺は少しやる気がでた。 だいじょうぶ?そのつづりに頷いて佐疫は?と返せば大丈夫、と。 よし、超元気でた。 『まだあ?』 クスクスと聞こえる声に、俺は手の関節をボキボキと鳴らしながらまた廃墟の中を走り回るのだった。 『あー楽しかった』 『うん、おにーちゃん面白かったねー』 『『ねー!』』 やっと捕まえた子供の霊は、四人。それぞれが一日中鬼ごっこして満足したのか遠足帰りの小学生みたいにキャキャと騒ぎながら俺達の前を歩く。俺は、げっそりした顔で子供たちの後ろ姿を見ながら長い溜息をはいた。 「おつかれ兆野」 「ういっす・・・。子供の体力は底知れない」 「あはは。何事もなくてよかったよ」 そう疲れ切った俺を労わる様に背中をポンポン叩いてくれる佐疫。 確かに何事もなかったのはよかったと思う。本当に、ただ鬼ごっこしただけで終わったからな。亡者相手はまだきつい。ぎりぎりなんだよなあ。しかも運が悪いのかよくよくいたぶられる。 それ一番いやだわ。 あーはやく佐疫達みたいになりたーい。 |