「ぶっは――――!!マジで!?ウケる!!!!!ぶひゃひゃひゃ!!!」 平腹が腹を抱えて笑う。んなことわかってたよ!!! ちきしょう!! 館に戻って、肋角さんに伝える。肋角さん手に持っていた煙管を落とす。深い溜息をもらう。くそう。そこから獄卒達に収集をかけたのか特務室で待機しているとどんどんやってくる。一番に来たのは平腹田噛で、平腹は俺を見た瞬間、身体が変化していることにいち早く――というかそういう勘が良い所がうぜえ。とまあ、気付いて爆笑。 隣にいる田噛も口元抑えているが、肩が震えていて笑ってる。こいつ笑ってる!! 一番笑われたくない奴に笑われてる!!くっそ!! 腹が立ってきたから大音量で笑う平腹へとパンチ繰り出す。笑ってても平然と避けた。うぐううう。 泣けてくる。 「笑うな馬鹿!ばか!ばぁぁぁか!!!しね!今すぐ死ね!!!!」 「バカなのはお前だしー!!!なに?ナニナニ?子供の次はおんな?しっかもすっげー巨乳!!!ぶはっ!!!!!パンチだすと揺れるんだけど!?」 「うるせええええええ!!!!!」 「うるせぇよ」 笑い終わった田噛は通常の顔で平腹を殴る。 よくやった田噛!!!!さっき笑ったの許してやろう! 「兆野・・・落ち着きなさい」 「っ・・・ぅ、はい」 肋角さんの落ち着いた――というよりも厄介ごとに疲れてる声色に申し訳なさを感じ動きを止める。静かに肋角さんの傍に近寄りそこで待機。 鼻血と口から血を溢しながらニヨニヨと今にも笑ってあげますよ、いつでも笑ってあげますよと言う風な顔で平腹がこっちをみてる。腹たつ。ムカつく。田噛もう一回殴っとけよ。殴れ。俺が許す。 特務室のドアが開く。 谷裂だった。 きりっとしている谷裂が「何用でしょうか」と肋角さんの方に視線を向けた。視界に入る俺。そのきりっと鋭い目が目玉が落ちるんじゃないかというぐらいに開かれた。 しばらく思考が追いついていないのか呆然とする谷裂。だんだんと眉間に皺が寄りはぁぁぁぁぁ。と長い溜息がこぼれた。なんか、きっといろいろ言葉が浮かんだんだけどたくさん浮かび過ぎてなにも言えない、みたいな。これはこれで平腹とは別の意味で柔くなってるハートに突き刺さる。 次にやってきたのは佐疫と斬島。 二人も俺をみた瞬間に目を見開いた。ただ、平腹田噛や谷裂の反応よりも柔らかくて俺に慌てて近づいて「どうしたの?何があったの?」と佐疫が心配してくれて俺涙目。 「佐疫、俺、俺・・・お婿に行けない」 「兆野、大丈夫だから落ち着いて。ね?」 佐疫優しい。さすが。 うむ。と隣で頷いた真面目で斜め上を行く斬島はジーンと優しさに触れていた俺の心に致命傷を負わせて来る。 「そうだぞ兆野。お婿には慣れないがお嫁にはなれるではないか」 「ちょっと斬島」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「ほら、兆野がへこんだじゃないか」 「?」 めまい。 お嫁になら慣れるって?だれの?なんの? 俺男だし!男だし!!!!!! 抜け出てきた魂をひっ捕まえて口の中に放る。 元に戻るから大丈夫だよ、とフォローしてくれてる佐疫の言葉だけが唯一の希望だよ。 「失礼します・・・あ、おれが最後かな。遅くなりました――――あれ?」 もう気分は最悪、という所で木舌登場。俺の姿を目に入れて何度も瞬きを繰り返す。そして目を何度とこすり俺を確認。そこでいつもの穏やかな顔だが無言のままこっちに近づいてくる。 「・・・」 「・・・」 スッと手が伸ばされる。 胸に触る気か!触る気なんだな!俺は咄嗟に両手で胸に触れさせないようにガード。絶対触らせねえ!! とか思っていたら、木舌の手は下へと下がった。 「!!!!!!???」 「あ、ないや」 胸じゃなくて股間をムンズとつかんできた。 俺は人差し指を伸ばす。 佐疫が今まで見たことない凶悪な顔で外套から拳銃を取り出す。 「死ね!」 「殺す」 「アビャア!?」 両手の人差し指で木舌の目を潰す。 佐疫が俺の股間を掴んでる木舌の腕に連発で弾を打ち込み、弾がなくなった拳銃を投げ捨てショートライフルを取り出し腕を吹き飛ばす。そして頭も。血と腕とばらけた頭部の血肉、脳が特務室を汚した。 「今のは木舌が悪いが、特務室を汚さないように。谷裂、木舌を廊下に放っておいてくれ」 「はい肋角さん!」 遺体となった木舌を乱暴に廊下に投げ捨てる木舌。 ざまあ。ざまあざまあああ!!!しね!後でもう一回殺す!!! やっと落ち着いた部屋の中で、肋角さんは紫煙を吐き出す。 「――という訳だ。抹本の薬が完成するまでこの状態となるが、元は男であっても今は女体だ。失礼な事、下品極まりない事はするなよ」 「一応レディになるわけだからね。特に、平腹」 「俺!?」 「木舌の次に変な事するのはおめーだろ」 「そう、田噛の言う通りだよ。わかったね?」 「えええ・・・はぁーい」 「では解散」 ぞろぞろと特務室から出ていく仲間達。みんな木舌の死体を踏んづけて出ていく。 俺ももちろん踏んづけて出て行った。 そしてここから男であるが女の身体となってしまった俺の苦労が始まる事になる。 |