「あ、え・・・マジっすか」 「ああ。なに、難しい任務ではない。どうだ?」 とうとう一人任務デビューすることになったようです。 雑務任務は一人でこなしたりとかできるようになってきたんだけど、一人で亡者捕縛任務は今回が初めて。斬島に鍛えてもらってるけど未だに勝てた事もなくて、逃げるのが精いっぱい。攻撃をしてもかすりもしない。 そんな俺がはたしてこれをクリアできるのかどうか・・・。 俺の不安を読み取った肋角さんが笑う。 「不安か」 「・・・は、い。俺、まだ斬島に攻撃が当たらないくらいの力量ですし・・・」 「確かにな。だが、お前の瞬発力は日に日に良くなっている。亡者捕縛は確かに相手をねじ伏せる力も必要だがそれ以上に素早く捕縛する必要性もある。そして私は、お前にならそれができると判断した」 「・・・」 「どうだ?やるか?」 「・・・や・・・り、ます。やります」 「よろしい」 肋角さんの言葉は不思議なものでストンと信用できてしまう。俺自身の力量は確かにない。けれどそれだけが捕縛に必要な技量じゃあない。肋角さんが”俺ならできる”そう判断してくれた。ならやるっきゃない。頑張るしかない。肋角さんの期待の為に。今まで鍛錬してきた俺自身の成長のために。 肋角さんから受け取った資料に書かれた亡者捕縛内容。 まだ誰も殺してはいないが亡者に変化しそうな一人の女性。三つ編みで大人しそうな外見だ。名前と生前の記録がかかれている。 18歳に卒業と同時に自殺。彷徨い続け、自我の不安定により周囲に被害を及ぼした事数件。人を傷つけてはいないがこの先その可能性は大いにある。 「では準備でき次第出発してくれ。ぬかるなよ」 「――はい!」 敬礼。 肋角さんのいる特務室を出て自分の武器を取りに行く。 いつもは亡者相手ならだれかと一緒にいるんだけど準備するときも館の玄関門を開ける時も誰も隣にいなくて、本当に最初から最後まで一人でやらなきゃいけないんだってなってうっわー、ってなるんだけど。 いやマジで。けど、頑張るしかない!おお、俺は頑張るぞ!! って思った俺は見つけた亡者と話した時に吹っ飛んだ。 そうだな。あれだな。あれ。 めんどくせえ。 『だって高校卒業したら結婚しようって言ってくれたのに卒業式終わって行ってみたら”知らない”っていうんだもの・・・』 「・・・ああ、うん、そう」 『あんなに大好きだったし、あんなにやさしかった先生がそんな事言うんだもの。あたし、気が付いたら屋上から飛び降りてたわ・・・』 三つ編みの少女はあーあ、と溜息を吐いていて、なんか想像していた性格よりもだいぶ違う。三つ編みやめた方がまだ見た目とその性格あってる。 ・・・大人しそうに見えた外見もやっぱり外見だけなんだなって思う。 『それはそうとなんだっけ?獄卒?あたし地獄行きなの?天国はないの?』 「天国はあるけど、人間の・・・何割だったか?あー・・・とりあえずほとんどは地獄行き」 『マジ?』 「マジ。で、俺はいつまでも彷徨ってる君を地獄に案内するために来たってこと」 『へえー・・・』 というか天国に行った人間なんて見た事も聞いたこともないな。どんな奴が天国に上ってんだろう。あれか、本当に悪意も何もないやつとか?けど、どうだろうな?一度だけ珍しくも地獄に来ていた天使を見たことあるけど・・・悪意も善意もない感じだったな。ルールさえきっちり守られてればって真面目な奴みたいな印象。 地獄の奴らも守る所は守るけど違反しちゃったりを平気でする。もちろん結果がよしなら見逃されるんだけど、それよりもっと一つ一つ守ってますよみたいな。結果が良くてもルールで違反だったらダメみたいな。そんなん。 『わかった。行く。けどさ・・・その前に・・・せんせいの所よってもいい?』 「あ?家?」 『そうそう。せんせい一目見てから、ね?』 「あーはいはい」 女性ってやっぱよくわかんねー。 キリカさんみたいにある程度の事を笑って許してくれるタイプじゃないし。あやこはあまりこういう話しないし。というかこういう恋愛?の話があんま好きじゃないからこういう話する女みるとちょっと近寄りたくなくなる。 やった。と喜ぶ三つ編み亡者。こっちに家がある、と浮遊する足で先を進む。さっさと連れて帰りたい気持ちがあるのと、女の亡者は前回呪いをかけられたこともあって納得するまでやらせないと呪いにかけられる気がする。子供にされるのだけは勘弁してほしい。 木舌が変態になるからな・・・。 三つ編み女子の後を追ってたどり着いた一軒家。窓から覗く少女と共に覗く。そこに男の姿はないけど、妻らしき人と子供がいた。妻子持ちかよ。 そんなんじゃあ断られるなあ。つうか、浮気か男。 『・・・あーあ、いない』 「いつまでもまたねーぞ」 『わかってるわよ・・・。・・・』 男に会えない名残惜しさに窓に張り付いたまま動こうとしない。んなことしたって会えないもんは会えないんだからさ。・・・。あ。 「浮気もな罪になるんだぜ知ってた?」 『何突然』 「だから、先に地獄に行って待ってれば?お前の好きな先生ぜったい地獄に来るから」 『名案!成程!地獄でせんせいを独り占めにできる!!』 「お、おう」 『それならさっさと案内して!ああ、せんせい先に地獄で待ってるから!あの世で愛し合いましょう!結婚しましょう!!』 「・・・・・・ハイ、じゃあ、地獄にいきましょー」 もう、わけわかんねえよ。 とりあえず、はい。あれだ、任務は遂行できたってことでオッケー? 引き渡した後に肋角さんにお褒めの言葉を貰ったけどなんだかよくわからなすぎて褒められたけど納得できなかったわ。いや、まあ、平和?でいいんじゃね?ってそう思う事にした。 |