「たっ・・・たっ・・・谷裂が死んだあぁぁぁぁぁ―――!!!!!」 床に膝をつき頭を抱えて叫んだ。 目の前の床には谷裂が血まみれで倒れていて心臓のある部分はぽっかりと穴があいてしまっている。確実に死んでる!!あの!谷裂が!!!! どうしよう!!俺、どうしよう!!!! 「ややややばい、やばいやばいやばばばい!亡者ドコ・・・亡者!」 谷裂の胸に穴をあけたであろう亡者の姿はない。こんな事なら任務をサボるべき・・・いやいやサボっても谷裂死ぬんだろうけどさああ!こうなるなら谷裂と一緒に仕事さぼればよかったあああ!!! うわああ!! 谷裂のそばを離れるわけにもいかないし、ガクガク震える手で剃刀をしっかりと握る。周りは昼だというのに音ひとつなくて道を歩いている生者もいない。完全に異空間に取り込まれてる。 谷裂はまだ再生する様子はない。 携帯だ。携帯かけよう!肋角さんに助けをおおお!! 「け、携帯けいたっ・・・アレッ携帯・・・?」 『貴方の探し物はこれかしらあ?』 「ぴぎゃああああ!!!」 真横から聞こえた声に悲鳴。剃刀を振り回せば携帯が空中で斬れた。 うわあああああ連絡手段があああああああ!!!!! 『なあに貴方、叫んでばっかりで弱腰ねえ』 ねっとりと耳に残る声。どちらかというと男性よりの声色。それだけでもなんだか気持ちが悪いっていうのに腰に声よりもねっとりとした何かがスススと撫でた。 「ひ、」 『あら、筋肉がないわ。やあね、モヤシなの?―――フゥ』 「おひあああああ!?」 『かぁーわうぃー』 耳に耳に!息が!!!! 谷裂!生き返れ!!早く!生き返れよおお!! 誰か、世界樹の葉を谷裂の口に突っ込んでくれええええ!! ザオリク!ザオリク!!ザオラル!!MPがねえ!!! 『可愛いから優しく、抉ってあげるわ』 「けけけけ結構です!結構ですっっ―――ぐ」 腰に当たっていたねっとりとした何かが皮膚を刺す。恐る恐る見ればねっとりとした部分は血がぬめってて、それに隠れた固い物は錆びた彫刻刀だ。 グググと肉に食い込んでいく切れ味のない切っ先は次第に、肉を裂きはじめる。 「痛いっ痛い痛い痛い痛い、優しくない!!!!」 『優しいわよお、そこの男みたいにすぐに殺さないんだからあ』 「それ優しいいわない!!!いっ!あ゛!」 ブチブチと肉が裂けていって神経が痛みをじわじわと脳に伝えていく。逃げ出そうと力んでも抑えられて動けない。奥へと彫刻刀が沈む度に痛みで脳が焼ききれそうになる。痛みに耐えようと己の腕をひっかくも痛みの比が違い過ぎて効果もない。 「っ・・・!・・・!!」 『ほうら、もう少しで開通するわよぉ』 「やめっ・・・ぐ!」 皮膚と脂肪、筋肉が裂け切れる。ぐっと中に押し込まれそこから一気に中へと入っていく彫刻刀。内臓のある内部に侵入した彫刻刀は動きを止める。 視界が真っ赤に染まっていく。口からぼたぼたと血なのか涎なのかわからないけど液体がこぼれてる。 耳がキィーンって鳴っていて起きているのか夢をみているのか。 ただ、痛みだけがいつまでも鮮明に俺を逃さないでいる。 『はぁーい、ミックスぅー!』 「ぅあああああああ!!!」 彫刻刀が、中身をかき混ぜ始めた。内臓が切れ、ずたずたにされていく気持ちの悪い感覚と痛みに叫んだ。 びちゃびちゃとこぼれてる大量の血。急激な出血で赤い視界がぐらぐらと揺れる。俺も死んじゃう。 「っ・・・は、あ゛・・・ひぐ、」 『あらあ泣いちゃって。男の子なんだから我慢しましょうよお』 「―――っやめ」 引き抜かれた彫刻刀が眼前に映る。 赤い液体で濡れた刃は、ゆっくりと視界の中央――眼へと向かっている。 「やめっ・・・やめろっ」 『ふふ、ふふふふふ』 「余所見をするとはいい度胸だな」 目の前に迫る彫刻刀が消えた。後ろでうぐう、とうめく声が聞こえて暖かい何かに身体を押し付けられた。心音が聞こえる。筋肉質な身体だ。俺は谷裂の胸元に寄せられてるようだった。 背後から聞こえる、容赦ない打撃音。骨と肉がボキグシャアと砕けていく音。きっと金棒でたたきつぶしてるんだろう。おお。こわ。 「くそ、気を抜いたつもりはなかったがやられるとは不覚。おい、兆野―――男のくせに泣くな!馬鹿もの!」 「だっでえええ・・・!谷裂いいいい・・・!!」 痛かったし怖かったし痛かったし痛かったんだよおお!!! しかも目まで抉られそうになってさああ!木舌とお揃いになっちゃうし、痛いし怖いし痛い!! 「喧しい!」 「いっだい!!」 叩かれた!! 肋角さんにも叩かれたことないのに!! |