マジでめずらしーな!





滅多に会わない仲間に出会った!

のそのそ、ふらふらと食堂に現れた弱気な顔の仲間。
木舌の緑の目と違ってもっと明るい蛍光色の緑色の目の獄卒。

確か緑っぽい名前だったんだけどまったく思い出せず。

「えっと・・・名前、なんだっけ?」

そう言えば「抹本だよぉ・・・」と落ち込んだ声色で帰ってきた。
ああ、そんなんだった!抹本!抹茶!!

「抹本っていつも何してるんすか?」
「基本的には薬調合してる」
「くすり?」
「亡者の中にはやっぱりいう事聞かないのいるから・・・そういう奴相手に薬つくったり・・・獄卒でも病気になれば早く治すために薬使ったり・・・」
「俺には無縁すね」
「兆野くんは平腹くんの次に元気だもんね」

そういや、風邪とかひかない。あれか、馬鹿は風邪をひかないってやつか。となると平腹よりかは馬鹿じゃないってことだ、良かった。

厨房前に来れば、配膳に朝ごはんを乗せてキリカさんが渡してくれる。今日の朝食は和食オンリーで、白玉みつあんだ。しかもお茶付き。見た目もお店に出されてるような奴でいつもながらにキリカさんの作るものは凄い。

「・・・朝ごはんが甘味・・・」
「あげないぞ」
「い、いいよ、いらない・・・」

今日の朝ごはんはサラダに豚汁、銀杏の入った炊き上げご飯か。匂いはいい匂いなんだけどやっぱりお菓子がいい。

「兆野おはよう――あ、抹本もいるんだ、おはよう」
「佐疫おはよう!」
「うん、おはよう」

朝から爽やかな笑顔を向けてくれる佐疫もキリカさんから朝飯を受け取り俺の向いに座る。

「抹本は珍しいね。いつもなら病院の方でとってるのに」
「肋角さんにたまにはこっちでご飯食べなさいって言われたんだ」
「ほとんど病院の方に籠ってるからね」

二人の会話にでてくる病院。弱弱しい口調からして病弱なのか?

「抹本って何?病院って・・・病気?」
「ああ、抹本はね病院側から材料提供してもらう代わりに薬も作ってるんだ。それで、病院の一室を借りて籠ってるのが日常」
「ひきこもり・・・」
「ち、違うよぉ・・・決して引きこもりってわけじゃないよっ」

首を左右に振って否定する抹本。籠ってる時点でひきこもりと似たようなものだよな。
けど、たまにしか見かけない特務課の仲間である抹本の仕事はどんなものなのかはきけてよかった。

「じゃあ今すぐ俺の身体を元に戻す薬を!」
「?」
「あ、兆野は今、亡者の呪いで身体が本来のより幼くなってるんだよ」
「あ、ああそうなんだ。えーっと・・・そういう薬はつくってないんだ、ごめんね」
「ええ、できねーの?」
「そういうのはかなり材料が特殊だし、成功する確率も小さいから失敗の方が大きいんだ」
「失敗・・・」
「そうだよ。怪我のなおる獄卒でも、”治らなくなる”事態になるかもしれないからそういうのは仲間相手には作らないよ」

へえ・・・。

「・・・とりあえず、つくらないってことだな」
「・・・・・・うん、そうなるね」


やっぱり俺も馬鹿だわ。
馬鹿だから取り合えず甘味食べる。


「めっしだー!!!お、おお?抹本じゃんかー!」
「平腹くん、お、おはよう」

馬鹿一号の平腹が朝から喧しく登場してきたよ。
佐疫の大声出さない、っていう注意にも大声で返すあたり馬鹿。

「なになに?なんでこっちで飯たべてんの??」
「肋角さんにこっちで食べなさいって・・・」
「へー・・・お前ひきこもりだもんな!」
「違うったらー・・・!」

やっぱり抹本、引きこもり認識されてんだよ。
隣の抹本の肩をポンと叩く。

「認めなきゃな、抹本」
「ななにを?!」
「ひきこもりを」

「違うってばぁ!」



その後から、仲間達に引きこもり発言を貰っていった抹本はどんよりとした顔で食べ終わった食器をキリカさんに渡し食堂から出ていった。