後輩が一人でスイーツ専門店に行くのが恥ずかしいと零していたので俺でよければ、と一緒に行くことにした。 俺も甘味は好きだし同じように一人で行くのもなんだかなって思う所があったから丁度良かったのかもしれない。 兆野と一緒に来た店はスイーツ専門店だけあって女性の割合がとても多い。その中に男女のカップルが混ざっているぐらい。男性二人だとしても僅かに浮く。それでも兆野は俺と来れたことに凄い喜んでいた。 俺と違い、甘味の事になるとたくさん食べる兆野。自身の皿には三種類ほどしかケーキが乗ってないのに対して兆野の皿には六種類ほどのケーキが。ここまで食べると胸やけ起こしそうだ。 紅茶を飲みながらケーキを食べていく。こういう食べ放題の店って量産性がいい代わりに味がだいぶ落ちるものだけれどそんなこともなくここまで盛況する理由がわかる。美味しい。 兆野がケーキをとりに行こうと立ち上がる。 行ってきます、という顔についている生クリーム。彼を止めて指でとってもったいないな、と舐めれば顔を赤くして嬉しそうに向こうに行く。 後輩というものはあんなにも可愛いもんなんだな。特務課にいる仲間達とはまったく違う性格だから新鮮だ。平腹みたいだけど迷惑かける事はあまりしないし、表情も豊かだ。面倒をみるのが楽しい。 兄になったかのような気分だよね。 ふふ、一人で笑ってると二人の女性が席の前で止まった。自分でいうのもあれだけとたまにこういう子がよってくるんだ。 「あの」 「はい?」 やんわりと断る姿勢をみせる。察しの良い人であるならばそこで終わるんだけど二人は顔を見合わせて頷きあってる。なんだろうか。 「あの、二人は―――付き合ってるんですか?」 予想していたのよりも斜め上をいく言葉に硬直。 誰と誰が付き合ってるって?俺と、兆野が?ええ? 「いや・・・付き合ってないですけど」 兆野とは先輩と後輩の仲だし、同性だし。そりゃあ可愛いけど後輩として可愛いっていうだけで恋愛としての可愛いは。ない。うん。あっても、困るよ。だって同性だし。 苦笑していると兆野が戻ってきた。首をひねって女性二人を見てる。 それに気づいた女性は不躾な質問ごめんなさい、と謝罪しその場を去っていく。去っていく二人をなんなんだと見つめてる兆野。 「逆ナンすか?」 俺もそう思ったんだけどね、と内心思いながら苦笑する。 席に座りケーキを食べ始める兆野。子供のように嬉しそうにケーキを食べる姿は見てて可愛らしい。・・・後輩としてね。 さっき言われた言葉がちらちらと覗いてくる。そうなると目の前の兆野に対する気持ちが少し違う風に感じてしまう。これは恋愛感情ではない決して。それは確かだ。 ただ、兆野に対して親身になってるかって言われたら応、と答えられる。本当に兄のようなブラコンみたいな感じ。 特に今の兆野はだいぶ身体が元に追いついてきたとはいえ見た目は年下だ。 忘年会の話になって、お酒の話になる。 ここで兆野は酒をあまり飲んだことがないという話をきいて、初めて飲んだ時は木舌と一緒だったという事を聞いていらっとした。あの相手を良い潰す木舌と初めてなのだからきっと潰されたんだろう。獄都で50年と生きてるがそれでも俺達からしたら十分子供の兆野。 わけもわからず潰されたんだなと思うと木舌に殺意がわく。 酒が強いのか弱いかの話をしてしばらく、時間が来た俺達は店をでることにした。 外はまだ明るくて、時間も余裕がある。お腹いっぱいの身体に運動させるために周辺の店を歩き回ることにした。 今の現世は、昔よりも様々な文化が混ざっていて、綺麗な物から面白いものまで何でもそろってる。兆野もそれらに目を寄せていてあっちこっちと忙しく首が目が顔が動いてる。 前を見てないで歩いてる兆野を引き寄せる。このままふらふらあるいていると誰かにぶつかってしまうか、迷子になってしまう。引き寄せられすぐ隣に歩かされた兆野は申し訳なさそうに恥ずかしく笑った。 「兆野もう少し落ち着いて歩こうよ」 「なんだかこうしてゆっくり外で歩くことなんてなかったもんで・・・あはは」 「平腹とかとよく出かけてるよね?」 「そーなんすけど、平腹はさっさと目当ての所だけ行くし、田噛なんて本屋でずっと立ち読みだし・・・!」 ぶつぶつと拗ねて口をとがらせる兆野。 意外と平腹と田噛の二人とは仲いいんだけど二人の個性に振り回されてるようだ。よしよしと頭をポンポン撫でてやれば子供じゃないです、と膨れる。 それを見てやっぱり俺は、兄として兆野を見てるんだなとひとり納得した。 |