「兆野、よく太らないよね」 佐疫とのお出かけ。一人では行き辛いスイーツ専門店。前々から行きたいって思ってたんだけど中はカップルか女ばっかですんげー入りづらい。っていう事を話してたら佐疫が「一緒に行こうか」と誘ってくれたわけだ。 俺からしたらもう最高な言葉で、佐疫に思わず抱き付いてしまった。その現場をみた谷裂に説教された。ニヤニヤと顔が破顔して更に怒られた。 その後に木舌が抱き付こうとしてきたからとりあえず殴っておいた。 そして約束の日に、二人で食べ放題スイーツ専門店。 目の前で食べている佐疫は俺のよりも量が少ない。対してこっちは皿の上に様々なケーキが乗っていてフォークでそれらを切り取り食べている。 「痩せやすい体質なんですよ。佐疫もそうでしょ?」 「まあ・・・そうなんだけど、食べる量が違うもの」 あくまで俺のは平均な量だけど、兆野の量はそれより多いじゃないか。そう紅茶を飲んで笑う佐疫はさまになっててかっこいい。確かに。そう言葉を返して皿の上のケーキを食べ尽くす。 スイーツ専門店だけあって女性の割合がものすごく多くてがやがやと聞こえる声色もやはり女性の声が多い。 「ケーキとってきます」 「うん。あ、ちょっとまって」 「?」 何かに気付いた佐疫が手を伸ばしてきた。指が頬に触れる。何か異物の感触がして下がった佐疫の指を見れば生クリーム。 もう50年も生きてるのに生クリーム口につけて気づかなかった羞恥に顔に熱が昇る。 「よし、いってらっしゃい」 「ハ、ハイ・・・」 しかもそれを舐めてしまうものだから、また別の熱がこみあげてきた。 乙女かよ。あああ、もう佐疫を前にすると乙女になる謎の病気が悔しい!病院に行こうかな?! ああああ、もう!! スイーツをとる列に並んで、まだ食べてないケーキを皿に盛って席へ。 席が見えたところで席の前に見知らぬ女性が二人いた。なんだ?女性二人は佐疫に何か話しかけていて幸せそうな顔をしてる。何はなしてるんだろうなー。あれが逆ナンってやつですか?やっぱ佐疫は顔も性格も言葉遣いもいいからもてるな、なんて思いつつ席にたどり着けば女性二人は愛想笑いを浮かべて去ってしまった。 俺をみた佐疫は苦笑してる。 「逆ナンすか?」 「いや・・・、まあそんなところ」 こころなしがそわそわしてるように思える佐疫はティーカップに口をつける。席に座りフォークでケーキを食べる。んまい。やっぱ甘いの最高! 「そうだ!佐疫さん!」 「へ!?な、なに?」 突然声をかけたからか驚かせた。スイマセンって謝りつつ気になってたことを話す。 「特務課は忘年会とかするんですか?」 「あ、ああ、うん、去年もやったから今年もすると思うよ。兆野は初めてだよね特務課の忘年会」 「はい。俺の予想では木舌が質の悪い酔っ払いに変化すると思います」 「あはは、当たり。お酒飲める方?」 「いえ、ここにきて最初の頃に木舌に初めてお酒を飲まされました」 ガチャン! 中身のなくなったティーカップが勢いよく置かれる。 一瞬、店の騒めきが消える。それも一瞬ですぐに元の騒めきに戻ったけど。 佐疫は、珍しく眉間に皺をよせてた。 「佐疫?」 「ん?なんでもないよ、うん」 木舌後で殺す。 そう笑顔になった佐疫の口から小さく聞こえたのは聞かなかったことにしようっと。 「じゃあ、木舌に気を付けないと。あいつ、酔いつぶれるまで飲ませてくるから」 「・・・ハイ」 そういや、最初初めて酒飲んだ時も酔いつぶれるまで飲まされたな。いい気分になってグルグルとなって気が付いたら自室に転がってたのを思い出す。あの時は頭にクエスチョンしか浮かばなかったけどそれが”酔いつぶれた”という事だとに気付いたのはそれからもう少し後になった。 俺って意外に子供なんだなってそん時思ったわ。 「佐疫はお酒強いんですか?」 「普通かなあ」 そこから去年の忘年会で仲間達はどうだったかという話になっていく。 田噛はとても弱いらしくて二杯目で潰れたとか。良い事聞いた。今年の忘年会は田噛を潰してやる。平腹は強いんだけど酔っぱらうと手が付けられないほどにテンションが上がり暴れだすとかで、毎回肋角さんによる格闘技で沈むという。 「肋角さんスゲー」 「肋角さんも酔うと少し大胆になるみたい」 佐疫の親友である斬島は表情こそ変わらないものの変な事を言いだし、谷裂は唐突に酔いつぶれるみたいだ。災藤さんは木舌並に強く、しかし酔ってる気配がないらしい。 「俺・・・生き残れるかな」 話を聞いてる限りではとてつもなく騒々しくなりそうなのが予想できて呟きをこぼせばこれも経験だよと遠い目で語る先輩が目の前にいた。 ああ。佐疫もどうにもできないんだなって。 思いました。 |