マジかよ!





「アレやっとけよ。あとコレとアレとそれもな。あぁ?俺にたてつくのか?」
「お前よっえーーーー!!!ごみじゃん!馬鹿じゃん!屑じゃん!ゴミ屑じゃん!!なんで存在してんの!?」
「兆野、まだ頼んでたやつやってないの?おれ、随分前にそれ頼んだはずなんだけど?忙しいんだけど?ねえ?いやがらせ?」
「貴様を視界にいれると無性に殴りたくなる。どっか行け!!」
「あっ良い所に来た!ねえ、お酒買ってきてほしいな。え?どうしてかって?だって君、弱いじゃん。ここで一番弱くて仕事もできないのに、こうやって雑務もこなせないの?やばいよ(笑)」
「兆野くん、もうちょっと頑張ってくれるといいんだけど・・・。君には無理な話だったかな?」
「・・・はぁ。使いものにならんな」
「・・・まあ、頑張れ」









「あああああああああああ!!!!」





俺はベッドの上で、この一週間言われた、けなされた言葉を思い出し頭を抱えてごろごろと暴れまわり叫ぶ。なんだよあいつらなんだよあいつら!!

俺の楽しい獄都ライフはどこに消えちまったんだ!!!

げっそりだよげっそり!あいつらよってたかって!慣れない仕事やりながら個人個人の雑用もこなしてりゃあさ!そりゃあ終わらねーよな!?ほんと仕事を遂行させるきねーよな!?酒ってなんだよ!自分で買いにいけよばーか!!いやがらせ?それしてんのお前らじゃねーか!!くっそ!ゴミじゃねーし!!

枕に顔をうずめて唸り暴れる。

ちくしょうちくしょうちくしょう!

枕を壁に向かって投げる中身の羽毛がこぼれた。構うもんか!

ベッドの上で立ち上がりジャンプして床に降りると冷蔵庫に入れていたチョコレートを取り出して包装を破いてパキリ!と食べる。


あー、うめえ。


お菓子はやっぱうめ。いや、最高だよな。というかお菓子ぐらいしか食べれないんだけどさ。だって、お菓子以外ってすげーまずいだろ。なんで周りの奴らあんなの喰えるんだか。
こんな至高の存在他にねーよ。




部屋の扉が叩かれた。

まさかこんな夜にも俺をののしりに誰かやってきたのか!?

「起きてる?」
「佐疫さん?どーぞどーぞ起きてますよ」

まさかの人物に驚きつつも部屋の中に招き入れる。佐疫はいわゆる優等生の獄卒で一通りのことはそつなくこなしてしまう秀才だ。教えるのもうまくて、今現在も怒られ、けなされながらも教えてもらってるわけだが。

まさか・・・こんな時間まで仕事内容を教えにやってきた、のか?


水色の瞳。仕事中の彼より鋭くないその瞳がこちらを見た。

「今日はお疲れ様。キリカさんから聞いたんだけど、君食堂に一度も顔だしてないんだって?」

食堂で飯を作ってくれてる半人半蛇のキリカさんは知ってる。何度か買い物を頼まれたりしたり、お礼に和菓子とかくれたりするいい人だ。

ただ、食堂で何かを食べたりはしてない。いや、だって食えないし。お菓子以外は食えないしくうきもないしお菓子喰えればいいんだもん。

だから行ってなかったんだが、佐疫はそれが気になっていたらしい。

「まあ、はい行ってないですね」
「キリカさんいつも何食べてるのかわからないからって心配してたよ」
「ははっ、すいません」
「おれも何を食べてるのか気になる。・・・何食べてるの?もしかして、お菓子、とか言わないよね?」
「あー・・・・・・・・・・・・ハイ、お菓子デス」
「は?」

心配そうにみていた瞳がとたんに鋭くなる。

やべ。

そう思う頃には、重く長いため息が目の前で吐き出されてその視線が背後にうつる。

目敏く向けられた先にあるのはお菓子の入った袋。あ。これは。

慌てて姿勢を変えて死守しようと駆けた俺だったが、そんな俺なんかより佐疫の方が断然早く、手に触れる前にビニール袋を取り上げられてしまった。


俺の!

お菓子!!



「没収」

「俺のお菓子ぃ!!」

「あと、明日の朝、食堂に来なよ。じゃないと蜂の巣にするから」



佐疫に慈悲はなかった。














目の前にドン!と置かれたのは、朝の魚定食。さんま焼きと白い米、それとだし巻き卵とサラダ、味噌汁が置かれている。

匂いはまあいい匂いで美味しいんだろうなってわかるんだが、隣で監視されている俺は、お菓子以外を食べれない俺は震えている。

「早く食べなよ」
「・・・ぅ・・・ぁ、あ」

拷問だ。これは拷問だ。秘密情報なんてなんにも持ってないからこんなことしても何も吐き出せない。むしろこれを受け入れたら口から情報なんかよりだいぶやばくて汚いものがおろおろとこぼれ出る。うわあ。けれど隣の佐疫は見逃してはくれない。冷ややかな視線を横から浴びながら俺は脂汗をかいていた。

「箸」
「う、・・・」

箸を持て。そう命令を受けた俺は、冷たくなった手を震えながら箸をつかんだ。それだけで悪寒に苛まれ動悸がする。俺はそれに耐えられなく水の入ったコップを手に取った。そして飲む。ゴクリ。水を飲んだという感じがしない。


「食べる」
「、」

俺は、箸を持つ。

小刻みどころかかなり震えて標準の合わない箸の先が、米を掬う。ガタガタガタと震えながら持ち上げて口の前へ。口が開かん。いや、口を開けたらおしまいだ。俺は終わりだ。

今にも白目をむきそうなのに。今にも吐き気がやばいのに。急激に乾燥していく口の中は泡だらけだ。口の端から少し泡があふれる。

あ、これあかん。
これ。やばい。


口に米が接触した。






途端に、視界が真っ暗になり箸が落ちる音を遠くで聞いた気がした―――――


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