まじですかそうですか





「木舌とおれと斬島と兆野の四人での任務だね。兆野は囮になるけど・・・危なかったらすぐ逃げるんだよ?」
「おう!」
「佐疫と俺は待ち伏せをする。気を付けろ」
「おお!」
「兆野、もっと女の子らしい声色と口調でいかないとだめだ。それと俺のこと木舌おにーちゃふぁ!?」
「黙れ死ねロリコン」


また気持ち悪いことを言い始めた木舌の急所を蹴り飛ばし、亡者が逃げ込んだという夜のデパートに先に入っていく。

夜のデパートは非常灯とわずかな機械の灯りしかついておらず真っ暗だ。それでも完全な真っ暗ではないので夜目の聞く獄卒の目で周囲に注意をしながら歩いていく。亡者がどこにいるかわからないからとりあえず歩き回ろう。

見つけたらなんとか逃げ回って佐疫と斬島が待ち伏せてるポイントまでいけばいい。


途中、鏡張りの壁に映った自分に驚いた。

こう、なんか。


「・・・客観的にみると女の子だよなあ」


暗闇の中、じまじまとみて一拍。円満の笑みを浮かべて一回転してみた。フリルのスカートがひらりと宙を舞う。腰が見え、少しへそがちらりと覗く。

「さえきおにーちゃん!ぶほ!!!」

なるべく高い声を出して尊敬する先輩の名を呼ぶ。呼んだらくすぐったくて噴き出した。

超恥ずかしい!誰もみてないよな?な?俺は周囲を見渡した。シーンと静寂を保っている店内には誰もいない。

よし。大丈夫だ。
さっきのは闇に葬り去ろう。



鏡をもう一度みた。

鏡の俺が腹を抱えて床に転がって大爆笑していた。


「わ、笑うなよ!!!――――って誰だお前!?」

俺だけど俺じゃないやつが鏡のなかで笑ってやがる。こええ。ドッペルゲンガーか?それとも、鏡の住人か?いつまでも爆笑してるそいつがだんだん腹立ってきて鏡をけった。腹を抱えながらちょっとまってよと手の平を向けてみせてひいひいやってる。

うっぜーこいつ!

そんな奴にいらーっとしてると鏡の奥で動く黒い影に気付く。背後を振り向き確認する。こいつに気をとられて気が付かなかったが雰囲気も変わっている。湿り気があるのに冷たい空気が漂う。

冷や汗が伝い、作戦通りに走ろう。そう足を踏み出す。鏡にいたよくわかんない存在は姿を消したのか、鏡に映る俺は、俺と同じ動きと仕草をしていた。

黒い影が俺に気付き木舌よりも気持ちわるいねっちょっとした声で『オニイサント、アソボウ?』とこちらに向かってきた。

きっしょ!きっしょ!!!木舌みたい!!


俺はそこからひたすら逃げた。亡者は女の子が本当に好きなのか、ただひたすらに追いかけてくる。階段を上り屋上に。この子供の体系だと少しきつい。だけど、追いつかれることもなく俺は屋上につながるドアを乱暴に開けてとびだした。

それに続き亡者も引っ付き飛び出してくる。
目の前で『ヤットオイツイタ』と言葉をこぼす亡者。伸びてくる黒い手。


俺は、馬鹿みたいに罠にはまった亡者を鼻で笑った。



「ばーか!」



それが合図とでもいうように、斬島と佐疫が姿を現しそれぞれの武器を向ける。逃げようとする亡者へとその銃弾を撃ち込み身動きをとれなくする佐疫。そしてその後にカナキリで亡者の片腕を切る。瞬殺並の動きに、みとれた。

「すげーな!はええ」
「まあな」
「どういたしまして」

亡者を束縛した二人。これで任務も無事完了だな。

獄都に続く道をつくり、束縛した亡者をつれて戻る。引き渡しをして、肋角さんに報告すれば約束通り休日を貰った。しかも二日!だらけてやる!!




るんるん気分で館を歩く。

鏡が目にはいって、そういえばあの腹立つ奴なんだったんだろう?と思った。


と同時に。


「・・・あ、木舌の存在忘れてたわ。まーいっか!」

今日は、いいことあったなー。
うん!