兆野の呪いは無事に解くことができた。 しかし、呪いにより子供に戻ってしまったからだは一気に大人の姿に戻ることはない。これからまた大人の、元の姿に戻るには時間がかかるだろう。 だいぶ忙しかった仕事量も減り落ち着いていく中、特務室に呼び出された兆野は肋角に一枚の書類を手渡された。 契約書だ。 期間的に借りていただけの兆野は仮契約しかしていない。 もし、このままここにとどまるのであれば、その書類に必須事項を記入し期限までに提出してほしい。 それだけ言われ、兆野は廊下にでた。 「んー・・・、いいのかなあ」 呪いが解けたのは嬉しいし、どうせ元の所に戻っても解雇されるだけだろうからありがたいんだけど、いいのかどうか。身体はまだ子供だし。たぶん結構長いままこの姿なんじゃねえの?そう考えると、契約していいのかわからん。さんざん迷惑かけてきたし、これからも迷惑かけるだろうし。 逆に、ここにいたいっていう気持ちもあるけどな。 だから、いいのかなって。 書類を難しい顔で眺めてると影ができる。うお、と見上げれば佐疫がのぞき込んでいた。 大人の姿の時は同じぐらいの身長だったのに8歳の姿の俺は佐疫とかなりの差ができてる。なんか悔しいぞ。 「何か悩んでる顔してたけど・・・契約するんでしょ?」 「そーしたいんだけどなあー・・・んー・・・なんかなあ」 吹っ切れない感じの気持ち。 そんな心情を読み取った佐疫が俺の頭を撫でてやや困った顔をしてきた。ムズリ。そんな顔をしだした佐疫をみて罪悪感が疼く。 「してくれないの?おれ兆野と仕事したいな」 「し、します!俺、契約します!!そんで、佐疫と一緒に働きたいです!」 うわああああ。俺。俺。なんでこんなあああ! 佐疫に負けた俺はそう叫ぶ。 なんかほんとなんで乙女なんだよ!いや確かに先輩として尊敬する佐疫と働けるのは良いと思うけどさ!! 言い方がさ!!なんか! 呪いの後遺症だ!そういうことにしておこう!! 佐疫が俺の脇をガシリとつかみ持ち上げてきた。いきなりの上昇に吃驚した。 佐疫が嬉しそうに俺を見上げている。その水色の瞳がとても綺麗だった。 「やった、ありがとう兆野」 「・・・お、おおお、降ろしてくださいよ!」 「ふふふ、もーすこしこうしてたいな!」 そうやって持ち上げたままでくるくる回り始める佐疫。妙に楽しそうにしているもんだから最初こそやめて!と叫んでいた俺もいつの間にかなるようになれともっとまわしてくださいよー!と遊んでしまっていた。 ちなみにぐるぐる回され続けた俺は、同じくぐるぐる回り続けめまいを起こし手の力が抜けてしまった佐疫によってぶん投げられて運悪く首の骨を折ってご臨終した。 |