あれま、本当なんだね






「あれ?兆野・・・また小さくなった?」

任務を終えて報告をしに館に戻ってきた木舌は、前日よりも背の縮んだ兆野が扉側に顔を向け床にしゃがみこんだのを見つけた。


幼くなった兆野はいまだに呪いが解ける気配はなし。そしてなによりだいぶ精神も幼児退行してきたらしく、それに伴って獄卒としての獄都民としての記憶も忘れて行っていた。

木舌の声に、もの寂しそうに床を見つめていた兆野の煤竹色の目が大きく開かれた。




「・・・・・・、だ、れだっけ」

「!」



兆野の拙い言葉に声に木舌は身を固くした。

今までどんなに小さくなっても獄卒の名を、同じ館に住む仲間の名を忘れる事がなかった兆野が。

木舌はカツカツと座り込んでる兆野に近づく。身長が高い木舌に対して怯えの視線をみせるも逃げる事はしなかった。しゃがみこみ、兆野と同じ視線にあわせる。

「・・・木舌だよ」
「きのした・・・?」
「そ。もう、忘れないでね」
「わっ!」

兆野を持ち上げる。そのまま高い高いと腕を伸ばして上にあげた。驚いた兆野の顔は、成人姿の名残がある。ただ、成人兆野よりもやはり子供特有のもち肌と小ささ、庇護したくなる雰囲気を持っていた。

このまま幼児退行していったら兆野はどうなるのか。

どこまで退行していってしまうのか。赤子か。それとも、赤子の前の、まだ命と呼べるかどうかもあやふやな存在になるのか。

そしてさらに前の―――――前世の姿にでもなってしまうのだろうか。


もしそうだとして、呪いも解けずのままなのだとしたら兆野は一人時をさかのぼり続けるはめとなる。

そうなったらもう兆野ではなくなるんだろう。



それは。


「き、のした・・・!おろして!」
「んー・・・さみしいなあ、それは」
「おろしてー!」


だんだんと怖くなってきたのか子供兆野が大粒の涙をこぼして泣き始めた。
ごめんごめん。そう謝り彼をそっと祈りを込めて抱きしめた。


はやく呪いが解けますように、と。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -